中日本自動車短期大学は、2016年10月、名古屋市消防局からの依頼を受け、昭和10年式(1935年式)ダイムラーベンツ社製の機械式はしご車の修復作業をおこなっている。名古屋市の要望は機械式はしご車としては世界最古の消防車を「自走」できる状態まで修復すること。
■ 修理進捗状況
・制動装置 90%
・動力伝達装置 80%
・電気装置 85%
・原動機 90%
・その他の装置 85%
およそ85%程度の進捗率となっている。
さて、令和2年度におこなっている修復作業は、エンジンから車輪に動力を伝達するクラッチ装置を稼働させる「クラッチレリーズ」の損傷個所の製作。東洋炭素に対して、カーボン部分の組成分析を依頼するとともに、その製作を行った。また、後藤木材にはメーターパネルの製作を、アネブルにはラジエターホースの製作を依頼し、現在組み上げつつある。
中日本自動車短期大学のこだわりは、はしご車が名古屋市に納車された当時の姿を復元させることにある。すでに当時の部品が失われた箇所も少なくなく、いかに85年前の姿をよみがえらせるのかに腐心している。たとえば、クラッチレリーズ内のカーボンの製作では、東洋炭素に依頼し、カーボンのX線マイクロアナライザー元素分析を実施。さらに顕微鏡組織観察を実施するなどして、85年前と全く同じカーボンの復元に取り組んだ。
エンジンの塗装も一旦すべての色を落とし、85年前の塗装を確認したのち、全く同じ塗装を復元している。トランスミッションのオーバーホールなどの取り組みでも常に「本物」にこだわった。
現在、自走できる状態にするまでの全行程の85%程度を終えているが、ようやくゴールが見えてきたといった状態にまで仕上がりつつあるようだ。中日本自動車短期大学の高い技術力と知見、熱いボランティア精神に敬服するとともに、同大学の清水教授はじめ先生方、学生の皆様には、心から感謝申し上げます。
なお、清水教授によると、1年後の令和4年消防出初式には修復が完了するのではないかとのこと。名古屋市民の皆様と首を長くして完成を待ちたい。