津波が懸念される天白川を消防団員が消防水利として活用することは妥当なのか?
津波が懸念される天白川を消防団員が消防水利として活用することは妥当なのか?
南海トラフ地震等の巨大地震の発生により、市街地における大規模火災による延焼が懸念されている。その際、消火栓、河川、ため池などの水利が初期消火には有効とされているが、これら水利が確保できない地域において、火災が発生した時に消火に用いるための水を貯めておくための消防水利が「防火水槽」であり、その中でも地震などの衝撃に強く、漏水を起こしにくい構造の防火水槽を「耐震性貯水槽」と呼んでいる。
さて、木造住宅密集地域である鳴尾地区(南区)は従来、消防水利として天白川を想定していたが、地元である星崎消防団で地震発災時を想定した初期消火訓練を行った際、課題となったのが、津波が懸念される河川において、本当に消防水利として活用できるのかどうかといった疑問だった。
■ 震災時に天白川を消防水利として活用する場合の課題
・堤防周辺における液状化が懸念される中、液状化の可能性の高い堤防に重量のある消防ポンプを担いで駆け上がることが可能かどうか。
・天白川に最大3mの津波の遡上が想定される中、消防団員を初期消火のためとはいえ、危険な河川で活動させることの是非。
名古屋市消防局、星崎消防団、そしてヨコイでこれら課題を整理・検討した結果、地震発生時に天白川を消防水利として活用することは困難である可能性が高いと判断。天白川の水利に代わり、新たに鳴尾公園に耐震性防火水槽を設置することとなった。なお、鳴尾公園周辺は河川に近く軟弱地盤であることから、地盤改良等の必要があり、令和3年度に設計業務を委託したのちに、令和4年度上半期に耐震性防火水槽設置工事を行う予定とされた。
■ 鳴尾公園耐震性防火水槽(令和4年度整備予定)
・容量 100トン
・耐震構造
■ 消防水利基準
消防水利は、常時貯水量が40m3以上または取水可能水量が毎分1m3以上でかつ連続40分以上の給水能力を有するものでなければならない。
■ 名古屋市燃え広がりにくい市街地づくり
〇 延焼遮断帯の形成
・未整備の防災道路の整備
・防災道路沿道建物の耐震化にあわせた不燃化
〇 消火活動に係る機能の充実
・耐震性防火水槽の設置、既設防火水槽の耐震補強
〇 市街地の難燃化の促進
・老朽木造住宅の除却・建替え
・建築基準法に基づく接道許可・連担建築物設計制度の活用
・不燃化のルールづくりにあわせた建替え