まぶちすみおの「不易塾」日記 2022年(令和4年)12月26日(月)第1903号 □■単なる「利上げ」と、見てはいけない!

◆なぜ、株価は下がり、円高に振れるのか
 日本銀行は12月20日の金融政策決定会合で、黒田総裁は金融市場に大きなショックをもたらした。円高は加速し、また、株式市場は大きく下落した。当日の決定事項の中で大きなショックをもたらしたのは「国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大する。」の部分である。https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k221220a.pdf

  黒田総裁は、当日の記者会見の中で、長期金利の変動幅を、従来の許容上限「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大することは、市場機能の改善のためであり、「金利引き上げ」ではないという。https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221221a.pdf 

 しかし、黒田総裁は、9月26日の大阪で行われた講演後の記者会見において、許容上限引き上げは明確に「金融引き締め」であると答えている。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220927a.pdf 

 今回の決定会合では、国債買入額を大幅に増額するとしている。これは、「10 年物国債金利について 0.5%の利回りでの指値オペ」を「毎営業日、実施する」としているが、金利が上昇局面であることを踏まえれば、長期金利の水準が、0.25%近辺から0.5%近辺に上がることを、日本銀行が許容していることを示している。

 市場機能の改善と黒田総裁は主張するが、金融政策が引き締め的な効果を持つのか、緩和的な効果を持つのかは、日本銀行が長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール)をしている金利体系のみならず、他の金融市場への影響、また、今回の政策決定がどのように、日本経済に影響を与えるのか、これらを踏まえて判断する必要がある。

 まず、株式市場については、今回の政策決定により将来的に明るい日本経済が来ることを皆が信じない限り、金利の上昇が下落をもたらす。また、為替市場についても、米国経済に対する楽観的な見方が大きく後退する中で、日本の金利の上昇は、円高ドル安をもたらす方向に働く。実際、政策発表があった当日、市場もそのように反応した。 

◆イールド・カーブ・コントロールの限界
 もともと日本銀行は、長期金利の操作はできないとしてきたが、2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入して以降、そのような考えを捨てた。金融市場において、金利が価格であることから、日本銀行は価格を操作すると「宣言」したのと同じなのでだ。

 本来、価格は、市場参加者の期待などを通じて変動し、需給の調整が図られる。しかし、価格を固定すると、そのような需給の調整機能が奪われるという副作用をもたらす。  特に、経済が大きく変動している時には、その副作用は甚大になる。アメリカの物価上昇局面で、この秋、過度に円安に振れたのも、日本銀行が金利を固定しようと頑張ったからに他ならない。結果としてみると、金利は動かず、他の市場の価格が大きく振れることになる。

 金利(価格)固定で得をするのは金融機関であり、他の産業は、過度な為替の変動に振り回され、場合によっては、間違った判断をしてしまう。まさに、国民生活の安定のためではなく、金融機関のためのイールド・カーブ・コントロールなのである。

 今回の利上げ局面においても、「市場機能の改善」という言葉が用いられたが、イールド・カーブ・コントロールにより、価格による需給調整機能が働かず、市場機能が衰えているが故に、「利上げ」をする必要性に迫られたのが実態だ。 秋の急速な円安、今回の利上げは、「イールド・カーブ・コントロール」が限界にあることを示している。 

◆今、求められている政策とは? 
 では、日本銀行は、現在の「イールド・カーブ・コントロール」を止め、どのような政策を目指すべきなのか。
それは、金利の操作を行わず、金利は市場の決定に任せ、一方で、年限の長い30年債や40年債を、インフレ目標が安定的に達成されるまでの間、大胆に購入を続けることなのだ。

 貨幣に近い償還期間の短い国債は、買う必要はない。その分、年限の長い国債を買う、一方で、金利は市場に任せる。これが日本銀行に求められている政策なのである。

あー、ずっと、言い続けてきてるのだが…。

The post まぶちすみおの「不易塾」日記 2022年(令和4年)12月26日(月)第1903号 □■単なる「利上げ」と、見てはいけない! first appeared on 馬淵澄夫(まぶちすみお)奈良県第1区選出 衆議院議員.

PR
馬淵澄夫
PR
mabuchisumioをフォローする
政治家ブログまとめ