石破 茂 です。
長崎4区選出、衆議院議員、元国務大臣地方創生担当、元防衛副大臣 北村誠吾先生が去る5月20日逝去されました。享年76。深い悲しみにたえません。私は同代議士をとても敬愛いたしておりました。選挙区に海上自衛隊の佐世保総監部が所在していることもあり、何度か選挙のお手伝いにも伺い、誠意と熱意溢れる演説に感銘を受けたものです。地方創生担当大臣在任中、47都道府県すべてを廻られたのも、地方に対する限りない愛情を持たれた北村代議士ならではのお仕事であったと思います。在りし日のお姿を偲びますとともに、常に弱い人々の立場に立ち、飾ることなく、媚びることなく、真実一路を貫かれたカトリック信者らしいご生涯に心よりの敬意を表し、御霊の安らかならんことを切にお祈り申し上げます。
広島サミットが無事に終了しました。各国首脳が平和記念資料館を訪問し、ある程度時間をかけて展示を見たことには大きな意義があったものと思います。あの悲惨極まりない展示を見て心が震えない人はいないはずです。
「核兵器なき世界」と「核戦争なき世界」は全く異なる、似て非なる概念であり、この二つは(前提条件を現状に固定するならば)論理的には整合が困難なものと思います。「核兵器なき世界」は理想だが、当面目指すべきは「核戦争のない世界」であり、そのために核抑止を機能させる、ということなのですが、「核兵器なき世界」をつくるための手段(核兵器に代わる抑止力)が難問です。核兵器はあまりに強力な破壊力を持ち、甚大な災禍を後世に至るまでもたらすものであるが故に、「使ってはならない兵器」「使えない兵器」となり、抑止力たりえているわけです。
単純に「核兵器のない世界」を現出させることも困難ですが、それを平和な世界たらしめるのはさらに至難です。「核の廃絶を!」という呼びかけは唯一の被爆国としての義務でもあり、今後ずっと続けていくべきものですが、それと同時に具体的にそこに至る道も研究しなければなりません。当面の方向性としては、核によらない抑止力、すなわちミサイル防衛システムの技術向上や核シェルターの整備をはじめとする国民保護体制の構築などを強化することによって「核を使っても所期の成果は得られない」という拒否的抑止力を高めていくことでしょう。「それも更なる軍拡に繋がる」との批判もありますが、だからこそ「安全保障のジレンマ」と言われるのでしょうし、わが国として、あるいは国際的にも、一層の思考の深化が必要です。
ところで、「国際社会は一致して…」という文言が散見されますが、こういう場合の「国際社会」とは一体何を指しているのか。国連決議の場合は「国連加盟国」に近いのでしょうが、G7などの場合は「同盟国並びに同志国」、すなわち「アメリカと軍事同盟を結んでいる国々」ということなのでしょう。これを文字通り「世界中の国がみんな」という意味だと考えてしまうと、かえって物事の本質を見誤るように思われ、注意が必要です。
定数増となる東京での衆議院の候補者擁立を巡って、自民党と公明党の対立の尖鋭化が報じられています。自民党東京都連内には「公明党と一緒にやれば岩盤保守層が離れていく。公明党と決別することにより新たな支持層が期待できる」との強硬意見もあるのだそうで、私はその論には与しませんが、それならそれで一つの考え方かもしれません。連立によって政権の安定を図ることはあくまで手段であって、権力の獲得や維持が自己目的なのではありません。安定した政権によって何を目指すのかが今一つ国民に見えにくくなっている現状に、少しでも変化が生まれるのであればむしろ望ましい面もあるのではないでしょうか。
政治は優れて妥協の営みであり、一致点を求める努力を怠ってはなりません。自民党には時に理念に走り、本当の弱い立場の人々に目が行き届かない面があることは事実であり、公明党がこれを是正してきた連立政権の妙味は大きいと思います。選挙で当選できるだけの得票を自分で開拓せねばならないのは当たり前で、その上で公明党の協力が得られるのは有り難いことであり、自分で努力を十分にしないままに、他党の票を当てにしてはなりません。鳥取県の国政選挙においては衆参ともにその都度政策協議を行い、政策協定を文書にして取り交わしてきましたが、「何のために協力するのか」を明確にすることも重要なことだと思っています。
昨日の衆議院本会議で、本会議における投票の際「与党も野党も茶番」と記したプラカードを掲げたれいわ新選組の櫛淵万里議員を懲罰委員会へ付託する動議が可決されました。議会における秩序を乱し品位を傷つけたとのことで、該当しないわけでもなく、再度にわたる行為なので動議には賛成しましたが、かつて委員会においてこのような行為を行った政党や議員は多くいたように記憶します。同じ行為でも、集団でやれば許されて、個人でやれば許されないというのであれば均衡を失しているようにも思われます。予算委員会での同議員の質問を聞いていて、その主張には全く賛同できないものが多くあり、政治的な立場は全く異に致しますが、「与党にも野党にも緊張感が足りない」とする本会議の弁明の中には、我々が反省せねばならない点も含まれていたように思います。
24日の読売新聞朝刊には、陸上自衛隊のヘリコプター事故について、ボイスレコーダー解析の結果、エンジンの出力低下が原因との見方を掲載しました。機微な情報がメディアに漏れること自体、極めて深刻かつ重大な問題です。情報の機微性と、ご遺族や整備担当者の気持ちに思いを致さずに話してしまう「関係者」の神経が私には理解出来ません。一方でこの件に関する防衛省からの正式な発表はまだなく、説明の際には報道の背景についても調査してほしいと思います。
来週は5月も最終週となります。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。