さる23日土曜日に出演したBSテレ東の報道番組(ニュースプラス9サタデー)は、国連改革をテーマとしたなかなか面白い内容でしたし、同席ゲストの笹川平和財団上席研究員・渡辺恒雄氏からも多くの示唆を受けましたが、ネット上で見る限り、この番組に関する報道は「石破氏、来年の総裁選出馬に含み」というものだけで、国連改革について触れたものは全くありませんでした。
含みも何も、「日本国憲法上、総理大臣になれるのは(参院議員も含めて)国会議員に限られるのだから、国会議員たる者、準備をしておくのは当然のこと」というごく常識的なことを述べただけなのですが、報道諸兄姉の「政局ネタ」に対する想像(創造)力の豊かさにはいつもながら嘆息せざるを得ません。前回の本欄でも指摘したように、「国際連合」とは米・ソ・英・仏・中(当時は中華民国)の五か国を中心とする第二次世界大戦の戦勝国が、戦後の国際秩序を維持するために創設した「第二次世界大戦戦勝国連合機構」(「連合国」)なのであって、多くの日本人がイメージするような「世界政府」的なものではありません。
憲章を作成するために開催されたサンフランシスコ会議に招請されたのは「1945年3月1日までに枢軸国に対して宣戦布告した国」に限定されていたので、慌てて宣戦布告した国々も含めた51か国が「連合国」となりました。国連憲章が参加国すべての国において国会の承認などの手続きを完了して条約としての効力を持ち、国連が正式に成立したのは1945年10月24日のことです。
日本政府の説明によれば、この憲章上の「敵国」とは、日・独・伊の三国に加えてルーマニア、ハンガリー、フィンランドなどとされていますが、日・独以外の各国は早々に枢軸国を離脱し(イタリアは1943年10月13日にドイツに対して、1945年7月15日に日本に対して宣戦布告をしています)、ドイツはヒトラー政権の後継となったデーニッツ政権が連合国に認められず、国家として一度消滅しているため、今日なお「敵国」とされるのは日本だけ、というのが前回ご紹介した色摩力夫先生の説です。
この敵国条項を「死文化した」と言われたからと放置し、集団安全保障機構としての国連が組織する国連軍への参加を「憲法違反」として否定しながら、わが日本国として国連において主導的な役割を果たしたい、ましてや常任理事国入りしたい、などというのは、もはや荒唐無稽といっても過言ではないのではないでしょうか。
このような内容も一切報道されない現状についても、どうせ国民にはわからないから報道しないのか、そもそも報道関係者がわからないから報道しないのか、そしてそんな状況を見て、報道で取り上げられないのなら発言しないという風潮になりはしないか、ととても恐ろしく思います。総選挙の時期とどのような関わりがあるのかは知る由もありませんが、総理大臣より来月中に経済対策を取りまとめるように指示が出され、補正予算を審議する臨時国会が10月20日にも召集される見込みと報道されています。常套句となった「成長と分配の好循環」に真に必要な要素は何なのか(国家財政支出の大多数を占めるに至る社会保障関係費の検討なくして分配の議論ができるわけがありません)、グローバル化した世界経済における「成長」と「分配」をどう位置付けるべきなのか、そもそも、今求められる「経済の成長」とは何なのか、それを考えるにあたって、付加価値の総和であるGDPと人々の満足度・充足度との関係をどのように定義すべきなのか、等々、せっかく「新しい資本主義」という目標を総理が立てられているのですから、基本的なところや前提から議論する必要があるように思います。その意味において「お金の向こうに人がいる」(田中学著・ダイヤモンド社・2021年)は、とても刺激的で示唆に富むものです。
今回の党の人事において、平時における自民党の最高意思決定機関である総務会のメンバーに留まることとなりました。
かつての自民党総務会のメンバーはほとんど全員が閣僚や党三役の経験者という重厚な布陣で、小泉純一郎、加藤紘一、古賀誠、粕谷茂などという経験と威厳と見識を備えた方々が侃々諤々の議論を交わし、白熱した議論が数時間に及ぶこともしばしばでした。総務会を乗り切ることを当時の執行部は「K点越え」と称していましたが、このようにお名前を挙げてみると本当に「K」が並んでいたのですね。総務会長の許可があれば総務以外の議員も出席して発言することが認められており、私も二回生の頃、何度か出席して震えながら自説を述べたものでしたが、あのシステムが自民党の活力の源泉の一つであったように思います。
今はブロックごとに一人ずつ割り当てられている総務ポストを各都道府県がローテーションで持ち回り、当選回数や派閥による調整も行われているようです。「モノを言わないのがお利口さん」「雉も鳴かずば撃たれまい」というわけでもないのでしょうが、かつての熱気と活力は失われてしまったように思います。折角、組織内に良いシステムがあっても、機能しなければやがて組織そのものが衰退してしまいます。私もその責任を自覚し、研鑽に努めなくてはなりません。かわぐちかいじ氏の「沈黙の艦隊」が映画化され、本日より全国東宝系劇場で公開されています。本作の実写化は困難とされてきましたが(アニメ化は1996年)、自衛隊の全面協力や主演の大沢たかお氏はじめ俳優さん方の好演もあって、なかなか素晴らしい仕上がりとなっているようです。「国家とは、独立国とは何か」「核抑止力とは何か」がメインテーマであるこの作品がどのように実写化されているのか、機会をみて是非観てみたいと思っております。ご関心とお時間がおありの方はどうかご覧くださいませ。
自民党ジビエ議連の会長として、27日水曜日、JR四ツ谷駅の「BECKS COFFEE SHOP」において、同店を首都圏において展開するJR東日本グループの「JR東日本クロスステーション」の幹部の皆様方との国産ジビエ鹿肉カレーの試食会・意見交換会に参加して参りました。日本ジビエ振興協会の代表であり、信州蓼科においてオーベルジュ「エスポワール」を経営する藤木徳彦シェフの監修になる国産鹿肉ジビエキーマカレー(税込980円・首都圏55店舗で1万5000食限定販売)は、クセになりそうな感動的な味でした。鉄道事業に地域の発展は不可欠であり、列車の運行に支障となる鳥獣の除去と相俟って鉄道との親和性を強調されたJR東日本の姿勢にも感銘を受けました。
また昨28日は、自民党水産総合調査会長として、中国の日本からの水産物輸入停止で打撃を受けている紋別・湧別・北見地区の視察に行って参りました。麻生内閣で農水相を務めていた時、いわゆる事故米事案(輸入米に日本では使用が禁じられている農薬が入っており、九州を中心とした焼酎や米菓製造業が打撃を受けた事案)に対応したときは、農水省の検査が杜撰であったことが背景にあり、大臣としてできるだけ早く現場に出向いて状況を把握するなど、可能な限り迅速・的確な対応を心掛けたのを思い出しました。及ばずながらではありますが、何の責任もない被害者に寄り添う、という言葉を本当に実感して頂けるために、今回も可能な限りの努力を致して参ります。
今週は岡部芳彦・神戸学院大学教授のゼミで講演する機会もありました。ウクライナを35回以上訪問された同教授の著書「本当のウクライナ」(ワニブックスPLUS新書・2022年)も大変示唆に富む良著と思います。
ロシア・ウクライナ戦争に関しては多くの書籍が刊行されていますが、最近読んだものの中では「ウクライナ戦争の噓」(佐藤優氏と手嶋龍一氏の対談・中公新書ラクレ・2023年)、「ウクライナ戦争即時停戦論」(和田春樹・東大名誉教授著・平凡社新書・2023年)、「ウクライナのサイバー戦争」(松原実穂子著・新潮新書・2023年)、「ウクライナの教訓」(潮匡人著・育鵬社・2022年)からいくつもの教示を受けました。それぞれ、よって立つ立場には大きな相違がありますが、異なった立場からのものを複数読むことが自らの議論を組み立てる上では重要です。それにしても、知らないことのあまりに多さに今更ながら驚愕致します。今晩は中秋の名月、早いもので明後日からはもう10月となります。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。