コロナ対策で財政調整基金が一気に枯渇

名古屋市は、世代間の負担の公平性に配慮しつつ将来世代に過度な財政負担を残さない計画的な財政運営を進めるための財政運営方針として「名古屋市財政規律」を平成22年9月に策定した。

■ 名古屋市財政規律
①一般会計の市債現在高が過去の最高額(平成16年度末現在高1兆9,009億円)を超えないようにする。
②財政調整基金の積立額100億円を目指す。

そのうち、規律②の積立額100億円を目指している本市財政調整基金の現在高の推移をみると...

■ 財政調整基金推移
平成20年度 42億円
平成21年度 88億円
平成22年度 75億円
平成23年度 138億円
平成24年度 146億円
平成25年度 136億円
平成26年度 145億円
平成27年度 109億円
平成28年度 140億円
平成29年度 157億円
平成30年度 167億円
令和元年度 125億円
令和2年度 100億円
※ 各年度は年度末現在高。平成30年度までは実績、令和元年度は2月補正後予算、令和2年度は当初予算

名古屋市はアベノミクスによる潤沢な税収を背景に、「財政調整基金の積立額100億円を目指す」という財政規律を守り、健全な財政運営をしてきた。

しかし...

令和2年2月からこの地域でも新型コロナウイルス感染症の影響が顕在化。名古屋市は急激な経済の悪化で苦しむ事業者や市民、子育て世帯を支えるため、「新型コロナウイルス対策協力金」71億3600万円、「新型コロナウイルス感染症対策協力金の拡充」48億8,200万円、「ナゴヤ新型コロナウイルス感染症対策事業継続応援金」45億7,000万円など、相次いで支援策を打ち出した。

その結果...

予算段階で100億円確保していた「財政調整基金」は一気に枯渇。5月21日現在、残り8億円まで激減している。もちろん新型コロナウイルス感染症をひとつの「災害」としてとらえたとき、「財政調整基金」の取り崩しはやむを得ない措置であることは間違いない。一方で、「災害により生じた経費の財源」に充てるべき「財政調整基金」が底をついたことで、いつ来るかわからない南海トラフ巨大地震への備えといった視点から見ると、現在の名古屋市の財政状況は危機的状況であることは間違いない。

さらに、今後、コロナウイルス第二波、第三波への対応、落ち込む中小企業者に対する経済支援、職を失った市民に対する生活支援など、想定される歳出圧力はさらに強まる見込み。財源はいくらあっても足りないのが実情だ。

今後、令和元年度一般会計の歳入歳出の決算上剰余金などが歳入として見込まれるほか、さまざまな基金の取り崩しによる一般会計への繰り入れで、一定程度、財源確保の余地はあるものの、コロナ拡大による経済の急激な悪化により、本市法人市民税の減少や個人市民税の減免なども見込まれており、戦後最悪と言われる経済状況の中、本市財政運営はぎりぎりのかじ取りを迫られる。
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横井利明
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