「GIGAスクール構想への対応について」の質問で、私が最も訴えたかったのは、なぜ、「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」であり、民間企業にも広く通用する重要な考え方である「クラウド・バイ・デフォルト」の原則を曲げてまで、自らサーバーやネットワーク機器を自社に設置して生徒の端末や管理用端末の操作ログを取得するシステム「オンプレミス」を構築・運用する方法に市教委がこだわったかだ。全国の自治体はフルクラウドを採用した。
市教委は、センターサーバーの操作ログの常時接続システムにより、児童生徒の様々な情報を把握することが可能となる。何時何分にどの児童ががどのソフトを利用したのか、何を検索したのか、どのキーボードを押したのか、児童生徒の位置情報など。児童生徒の行動を常時監視し、子どもたちのプライバシーを自治体が把握することが必要なのだろうか。万が一、これら情報が流出した場合には、子どもたちの自宅などに関する情報等が漏洩することになりリスクは極めて高いものがある。
■ センターサーバーによる児童生徒の常時監視の課題
・センターサーバーを有することで、多大な維持管理費が必要となるばかりでなく、すぐにシステムは陳腐化し名古屋のICT教育はガラパゴス化
・災害等でセンターサーバーが利用できなくなる可能性
・センターサーバーで蓄積された児童生徒の個人情報の漏洩が起きてしまった場合の対応
・独自のセンターサーバーを設置することにより費用は増大
また、児童生徒によっては自宅にすでにパソコンやタブレットのある家庭も少なくない。総務省の全国調査によると、2019年時点で中学生の約75%以上がスマートフォンを所持しており、いくら学校から配布したタブレットだけ監視しても、教育委員会が目指す「子どもを守るため」というのは論理破綻している。
まさに教育委員会が進めるべきは、センターサーバー方式による児童生徒の常時監視ではなく、デジタル時代を生き抜くたくましい児童生徒の育成であり、子ども自身のデジタルリテラシー教育こそ推進すべき。子どもたちのプライバシーへの配慮の観点からも、そしてシステムの拡張性、費用負担からも、センターサーバー構築の方針については、ぜひ、見直しを進めるべきだろう。