耳を疑った、安倍昭恵氏によるロシア・プーチン大統領との面会。林官房長官は「政府として(昭恵氏と)やりとりはしていない」と述べましたが、現地の大使館を含め知らなかったはずはないのでは。日本政府として何らかのメッセージを託したのでしょうか。
国民には、ロシアへの渡航中止勧告が出されています。ただし、「真にやむを得ない公益性を有する任務遂行のため、モスクワ市に渡航・滞在する場合は、⋯⋯現地大使館と緊密に連絡をとり⋯⋯」(外務省・海外安全ホームページ)とあります。さすがに勝手にプーチン氏に会ったわけではないでしょう。
ロシアは先日も、ウクライナに最大規模の空爆を実行したばかり。国際法に反してきたロシアに、国際社会では批判が続いています。今回の渡航が誤ったメッセージを送ることにならないかとの記者の質問に、林官房長官は「コメントする立場にない」と答弁を避けました。
安倍元首相とプーチン大統領は良好な関係を築いたと報じられもしますが、これまでの領土交渉を「二島返還」に後退させたことは評価などできません。むしろプーチン氏が、日ロの間に「領土問題はない」とまで言うようになったのでした。明らかな後退です。
そもそも千島諸島と歯舞群島・色丹島についても、当時の国際ルールを無視したヤルタ協定によって、不当に占拠されたものでした。国際ルールを無視した不正義をただすことは、日本こそ真っ先に国際社会へ訴えてしかるべき立場にあると思います。
今月13日、元島民らが石破首相へ要請した際に、墓参は人道的問題として最優先に取り組むと述べました。この点は前に進むよう望むばかりですが、領土交渉は一般論の回答にとどまったようです。
後退した「二島返還」論から脱し、あらためて歴史の道理を交渉の土台に据え直すべきではないのか。現職のときに質問した1人として、領土問題には私も引き続き向き合っていきたい。元島民には時間がありません。
【今日の句】道理なき 領土交渉 転換を