命の選別を許さず
4年前の「津久井やまゆり園」事件の衝撃を忘れられません。かたや先日は筋委縮性側索硬化症(ALS)患者の嘱託殺人が起き、また気持ちが重くもなります。障害や病気があることで「社会のお荷物」だと思うことがないような、あたたかな社会にしたいと思うのです。
嘱託殺人で逮捕された大久保容疑者は、ネット上で優生思想的な主張を繰り返していたといいます。誰でも1人の人間として安心して生きられる社会とは、まったく反対の優生思想を持ちながら医療行為をしていたのかと思うとぞっとしますが、一個人の思想的問題にとどめてはなりません。
「やまゆり園」事件にしても、障害者団体からは元職員が障害者を否定するようになった背景も突っ込んで解明するように求めています。経済的な「生産性」や「効率性」を求める価値観の広がりは、人権をも否定する風潮が広がる土台につながってこなかったか。政治の側の発信も問われています。
いま新型コロナウイルスによる、医療機関のひっ迫が心配です。海外では「命の選別」という動きまであったことが報じられました。他人事でもなければ遠い世界の話でもなく、自分たちに引き寄せて考えあいたい。
【今日の句】人間に 優劣つける 愚かさよ