人日の節句など

 石破 茂 です。
 新年あけましておめでとうございます。本年も引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。

 地方創生担当大臣在任中、2年間にわたり秘書官として支えてくれた中野祐介さん(元北海道副知事・前総務省都道府県税課長)が、この度3月26日告示・4月9日投票の浜松市長選挙に立候補することとなりました。4期務めた鈴木康友現市長は今期で勇退され、中野さんは自民党の推薦を受けて今回の選挙に臨みます。
 地方創生担当大臣は平成27年に、当時の安倍総理の強い意向によって新設されたポストで、私が初代大臣を拝命したのですが、初めてのプロジェクトとして試行錯誤の連続の中、事務秘書官には総務省(旧自治省)からは中野さん、内閣府(旧経企庁)からは中澤信吾さん、財務省からは坂口和家男さんという優秀な人材が派遣され、政務秘書官には農水相時代に事務秘書官を務めてくれた得田啓史さんをお願いし、本当に助けてもらいました。
 防衛庁長官、防衛大臣、農水大臣在任中も人物・識見共に優れた秘書官に恵まれ、大臣職は本当に秘書官あってのものだと思います。中央官僚にはとかく尊大、冷徹、出世志向などという否定的な評価が付きまといますが、そうではない立派な人たちも多くいるというのが私の実感です。
 中野さんはその後、北海道総務部長、副知事を務め、179市町村もある北海道の首長さんたちからの評価は頗る高く、心から嬉しく思ったものでした。明後日9日は浜松市で開かれる自民党浜松市浜松中央支部の新年会で講演する予定ですが、一人でも多くのご支持を頂いて、立派なスタートが切れますよう微力ながら応援したいと思っております。

 年末年始にはそれなりに本や論説を読んだのですが、年末の片付け中に見つけた戸蒔仁司・北九州大学准教授の論説「敵基地攻撃論のキメラ-いわゆる『敵基地攻撃』に関する政府解釈の変遷について」(北九州市立大学法政論集第40巻第4号・2013年3月)を再読して、改めて大きな示唆を受けました。昭和31年2月の衆議院内閣委員会における鳩山一郎総理大臣答弁(船田中防衛庁長官代読)から始まる議論を丹念に検証し、その変遷を論じたものですが、読みながらいささかの興奮を覚えるとともに、浅薄な議論に堕しがちな自分を恥じたことでした。故・吉原恒雄先生が広島女子大学教授時代に書かれた「『集団的自衛権行使違憲論』批判-有権解釈の矛盾と変更の必要性」(広島女子大学国際文化学部紀要・1996年)もそうでしたが、世の中にはさほど知られていなくても、時流に左右されない極めて優れた価値を持つ論説があるものだとつくづく思わされます。戸蒔准教授の論説はネットでも見られますので、ご関心がおありの方は是非ともご一読くださいませ。

 「新しい資本主義」はどうあるべきかにつき、今更ながらに「資本論」の入門書も読んではいるのですが、そもそも基礎的な知識が無いのでどうにも理解が進みません。学生時代に生意気にも『なんだ、マル経か』などと軽視していたことを深く後悔しています。自分に残された時間がそう長くはないことを思うと、焦燥感ばかりが募ります。

 岸田総理大臣が「異次元の少子化対策」を大胆に検討する旨を述べられました。金融緩和以来、流行りとなった「異次元」という言葉にはどうにも違和感を禁じ得ないのですが、少子化・人口減少対策が日本にとって最大かつ喫緊の課題であることは論を俟たず、これからの議論にも積極的に参加したいと思っています。
 少子化は婚姻率や初婚年齢、いわゆる「適齢期」の所得、労働時間等、極めて多岐にわたる要因に基づくものであり、その様相は全国47都道府県、1718市町村(北方4島の6村を除く)によって全く異なるのであり、国が方針を定めるだけで事足りるわけではありません。出生率の上位10県のほとんどが九州・沖縄・山陰地方であることも、婚姻率と人口減少率が正の相関にあることも、決して故なしとしませんし、少子化対策に成功している鹿児島県伊仙町や岡山県奈義町、島根県大田市大森町などの取り組みも、謙虚に学ぶべきです。この議論が防衛費増額の時のように「まず規模と金額ありき」「財源は増税か国債か」などというような、結果的に中身の議論を十分に詰めないままのものにならないように努めなくてはなりません。

 年末には一部の大臣と政務官の交代がありました。閣内人事のみならず、衆議院議員の純粋ブロック比例候補の選び方や順位付けには再考の余地が多分にあると思います。「有権者は政党の名簿を見て投票しているのだから問題はない」というのは単なる形式論であり、衆議院の解散当日に自民党本部がほぼ一方的に決め、有権者は候補者の人となりを知りえない実態は、民主主義の本旨からは離れているものではないかと考えます。比例名簿登載の順位付けには、派閥の利害なども複雑に絡まっており、事はそう簡単ではありませんが、せめて当該ブロックの都道府県連の了解を取るなど、有権者と議員の意識の乖離を少しでも解消するための真摯な努力をしなければ、政治不信が高まり、いつの日か爆発することにもなりかねないと強く危惧しております。

 今ではこの風習もあまり見られなくなってしまいましたが、今日1月7日は「人日(じんじつ)の節句」、七草粥をいただく日で、子供の頃、とても楽しみだったことを懐かしく思い出します。
 三連休の方も、お休みなく働かれる方も、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。本年が皆様にとって良い一年でありますように。

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石破茂
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