通常国会開会など

 20日月曜日に通常国会が開会し、政府四演説が行われました。安倍総理の施政方針演説は、今までの実績を紹介し、「○○しようではありませんか!」という呼びかけ調で締めるものでした。これは総理のスタイルとして定番となりつつありますが、些細なことながら聞いていてやや気になった点が二つありました。
 一つめは、「来年度(令和2年度)の税収は過去最高となりました」と断定形で述べられたことです。予算案提出時点での税収はあくまで見積もりなのですから「過去最高となる見通しです」とする方がより正確だったのではないでしょうか。
 二つめは、島根県江津市でパクチー生産を起業された方を地方創生の成功例として挙げられた際、同市を「東京から一番遠い町」として紹介されたことです(「東京から鉄道で7時間。島根県江津市は『東京から一番遠い町』とも呼ばれています」)。正直、やや驚きました。確かにWikipediaで江津市を検索すると「東京から一番遠い町として高校教科書地理Aでも紹介された」とあり、江津市のホームページにも同様の記載がありましたが、あまりに腑に落ちないので調べてみると、出典は「地理A 地球に生きる」(教育出版、2006年)のようで、そこには様々な地図(変形地図)が紹介されており、その一例として「本州内で東京から鉄道を使って移動する場合の所要時間で作成した地図」が載っていて、そこでは江津市が一番遠くに位置していました。当然ながら、羽田空港から萩・石見空港まで飛び(約1時間40分)、益田駅まで移動して(バスで約10分)、JRの特急を利用(47分)すれば、羽田から3時間半余りで到着します(萩・石見空港の開港は島根県西部県民の長年の悲願でした)。
 人口が社会増に転じた江津市が地方創生の好事例として紹介されたことは素晴らしいことであるのに、このパクチー農家の方が既に江津市を離れられていたことと併せ、事務方は事実の確認を綿密に行い、総理の演説をより良いものに仕上げる努力をしなければなりません。我々山陰の人間が「東京から遠い」と言われることに極めてナーバスになりがちな所為なのかもしれませんが、知らない人が「飛行機も使えない、東京から一番遠くて不便な地域なのだ」と受け取らなければよいが、とふと思いました。

 桜を見る会、IR、閣僚辞任、参議院広島選挙区問題などもすれ違いの議論が多く、残念ながら国民の多くが抱いている疑問が完全に氷解したようには見えませんし、消費増税の影響も、政府の認識と経済の実態との間にはやや乖離があるように思われます。さらに努力を重ね、きちんと数字を精査・検証したいと思っています。
 我々衆議院議員が国民から与えられた今の任期は、総理が「国難突破解散」と銘打って断行された総選挙によるものなのですから、任期中はその「国難」が何であり、その解決に向けてどのように取り組み、どのような成果を得たか、あるいは得られていないかを常に検証し続けなくてはなりません。特に我々与党は片時たりともそれを忘れるべきではないと痛切に思います。
 出生数が過去最低となり、消費が低迷し、東京一極集中が加速し続けるのは、国家の構造自体がそのようになっているからであり、これを根本から変えない限り我が国の持続可能性が危ぶまれます。令和の御代となった今、故・堺屋太一先生がその絶筆で述べられた「三度目の日本」の姿を国民に提示し、それに至る道筋を示すことが、我々に課せられた責任です。

 週末は、25日土曜日が自民党大阪第5区支部大会・憲法研修会で講演(午前11時・大阪ガーデンパレス)、関係者との昼食会(午後1時・大阪市内)、興洋会令和2年度新年会(午後6時・鳥取市内)。
 26日日曜日は安田優子前鳥取県議会議員叙勲祝賀会(午前11時・米子市内)、という日程です。
 自民党支部が開催する憲法改正についての講演に各地から呼ばれるようになったのは有り難いことです。物事の本質を、できる限り偏ることなく正確にお話ししたいと思っております。

 1月も最終週となります。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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