澤田廉三など

 石破 茂 です。
 臨時国会は明日で閉会となります。
 新型インフルエンザ等対策特別措置法を、新型コロナウイルス対策を正面から取り入れ、あるいは都道府県知事の権限を強化し、あるいは日本版CDCを創設するなどして改正することや、米国新政権発足に伴う米中関係の今後と我が国の外交・安全保障政策の在り方、格差是正と経済成長両立のための経済・財政政策の方向性、「桜を見る会」や吉川元農林水産大臣の金銭授受問題など、さらに議論を深めなくてはならないテーマは多くあったはずですが、野党から提案された会期延長を与党が拒否してしまえばどうにもなりません。国会の存在意義そのものが問われているのであり、国民の間に「国会は存在してもしなくても同じだ」とのニヒリズム的な諦観が急速に広がりつつあるように感じられてなりません。
 これがいつしか「やはり検察権力しか政治腐敗を正せない」とか、「民主主義より専制・独裁政治の方が効率的だ」とか、挙句の果てに「本当に庶民のことをわかっているのは国を憂う自衛官たちだ」とかいう方向に変わっていくことを心より怖れています。
 いまさら「桜を見る会」のような話をいつまでやっているのだ、もっと重要な話があるはずだ、とのご批判もありますが、もっと重要なことがあるからこそ、これまで述べてきた主張の正しさを早急に明らかにして国民の納得と理解を得ることが政府・与党の責任であり、それを果たさずして批判する側に責任の矛先を向けるのは筋違いというものではないかと私は思います。

 コロナ感染が急速に拡大しつつありますが、情報発信は一元化し、様々な言説が流布しないような体制を構築すべきと思っています。
 コロナの感染者や重症者の増加も深刻ですが、自殺者数が4か月連続で増加し、今年10月は対前年同月比40%増の2153人と、2015年5月以来の多さで、中でも女性の自殺者の増加が顕著なのが気になります。これにコロナ禍がどれほど影響しているかは定かではありませんが、高齢者のみならず、女性、非正規労働者、低所得者等々、弱い立場の方に多くの負担がかかっているのではないでしょうか。

 6日日曜日に鳥取県岩美町で開催される「澤田廉三没後50年記念フォーラム」でゲストスピーチを行うため、同町浦富出身で元外務事務次官・元駐フランス特命全権大使・初代国連大使の澤田廉三氏について調べているのですが、お名前こそ知っていたものの、不勉強でその業績や人柄については全く知りませんでした。
 この8月に刊行された「愛郷・外交官 澤田廉三の生涯」(片山長生著・同書刊行会刊)は、澤田氏の生涯と、戦前・戦中・戦後の激動の歴史、その時代を生きた人々の発言と行動を生き生きと描いた作品です。中でも、昭和2年4月から昭和5年8月まで、外務本省の課長在任のまま、即位されたばかりの昭和天皇の侍講掛(じこうがかり・君主に仕えて学問を講義する役職)に任ぜられていた間の昭和天皇との会話は、昭和天皇の深い思し召しが強く感じられます。
「最も経済が発展し、豊かさを誇っていたアメリカでさえあのような悲劇が起こるんだね。結局、恐慌は自由主義の宿痾なのだね」
「私が一番しっかりした羅針盤を持たなければ駄目なのだね」
「私は裕仁だから(仁徳天皇と違って)徳がないのでこんな世にしてしまった。仁愛多き者になりたいのは人一倍なのだが。なぜ軍人たちも、議員たちも天皇の独立大権である統帥権を好き勝手に弄ぶのだろうね」
 当時の世界大恐慌や統帥権干犯事件を受けてのお言葉ですが、ひたすら恐懼する他はありません。

 子供のころから比較的歴史は好きなのですが、私の歴史勉強はともすれば年号の記憶に特化してしまったようで、深い知識に乏しいことは否めません。澤田廉三氏のみならず、学徒出陣に反対して東条首相と対立して文部大臣を辞任し、終戦直後に敗戦の責任をとって自決した医学者・教育者の橋田邦彦氏など、鳥取県出身者にも立派な人が多くおられたのですが、歴史を郷土史と重ね合わせる形でリアルに学ぶことの楽しさを今頃になって実感しています。「愛郷~」は当初700部の限定出版ですが、鳥取市内の書店にて発売中です。

 コロナの感染拡大によって、5日土曜日の関西での日程は延期となりました。
 6日日曜日は、岩美町でのフォーラムの他、いくつかの地元日程が入っております。鳥取県は感染者数、感染率ともに全国で最も低いレベルではありますが、十分に注意して行動しなければなりません。
 今年も残り少なくなりました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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