菅総理の辞任表明から総裁選への報道に思うこと

 石破 茂 です。
 
 菅総理が在任一年で辞任なさることになりました。コロナ禍の中、ほとんど休みを取られることもなく、国民のために働くとの強い思いで職務に精励され、東京オリンピック・パラリンピックを成功裏のうちに開催されたこと、デジタル庁の創設など、歴史に残る仕事を果たされたことに深く敬意を表します。同時に私は、衆議院本会議場で菅義偉と書いて投票した者として、お支えし切れなかったことを国民の皆様に深くお詫びしなければなりません。
 それまで総理総裁候補としてはあまり名前も挙がらなかったところから、「東北・秋田の農家の出身で、高校卒業後上京し、苦学して大学を卒業した後、国会議員秘書、市議会議員からたたき上げた、パンケーキの大好きな苦労人の令和おじさん」という国民の好感度・共感度の高いイメージが一気に広がり、自民党総裁選挙に圧勝され、総理に就任されたのは僅か一年前のことでした。
 その後、説明力や発信力が足りないことが支持率低下の原因だと解説するメディアが散見されますが、たとえそうであったとしても、それを皆で総力を挙げて補うのが菅政権を作った我々自民党の国家国民に対する責任だったのであり、この内閣が一年で退陣に至ったことを我々は国民に心から詫びなくてはなりません。本当に申し訳の無いことでした。
 そのお詫びを全くしないまま、その気持ちを持たないまま、次期総裁選びが熱を帯びていく様に、私は強い違和感を持っています。
 誰が選挙の顔として相応しいか、などというのは我々議員のみの問題であって、国民とはほとんど関係がありません。
 新型コロナ対策は日本の医療制度の根幹を問うものであり、目先の対策のみに拘っても解決はできないと思いますし、憲法、安全保障、皇位継承、人口急減、格差と分断、気候変動、エネルギー、すべて「票にもカネにもならない」「難しい議論は国民には分からない」「一時騒ぎになっても国民はやがて忘れる」などと言い訳をして、国民と真摯に向き合ってきませんでした。そのことを、我々は真剣に反省しなければなりません。

 昨年の総裁選挙は、多分に自惚れであったとしても、私なりに党の在り方、政策全般について、完成度の高いものが提示できたと自負していますし、政策論戦も納得のできるものでした。しかし結果はまさしく惨敗そのものでしたし、示された多くの党員の意思もその後の党運営・政権運営に反映されたようには見えず、自民党も国も変えることには繋がりませんでした。
 多くの同志の負担や犠牲を伴いながら同じことを繰り返し、何も得られないとすれば、それは自己満足にしか過ぎないのだろうと考えておりますし、今回それを繰り返すことは避けなくてはなりません。
 岸田氏、高市氏、河野氏の主張をよく拝聴しながら、私の採るべき道を決断するつもりです。多くのご意見、ご指摘を賜り、心より感謝しております。「行蔵我に存す。毀誉は人の主張」。

 今週の都心はめっきり秋めいてきました。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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