食品・日用品・ガソリンと値上げラッシュが止まらない中、17日、政府は緊急的な追加経済対策を盛り込んだ補正予算案を閣議決定しました。来週、国会でその是非について集中的な審議が行われます。
◆構造的な物価高騰
緊急経済対策を行う上で認識しておかなければならない事実は、この物価高は一時的なものではなく、構造的なものであるということです。日本経済は先進国でも唯一と言って良いほど、30年間慢性的なデフレ状況にありました。原因は政府による緊縮増税路線や、産業・労働構造の転換の失敗など様々ですが、為替が比較的安定していたことや、諸外国のインフレもそれほど急激なものではなかったことから、外国にひきずられての物価高騰が起きることはありませんでした。
しかし、コロナ禍は状況を一変させました。世界中で金融緩和・財政支出によるマネーがあふれ、需給バランスは崩れ、インフレの素地を作りました。そして、折からの混乱にウクライナ戦争やオミクロン株の大流行などが追い打ちをかけ、インフレはかつてないほど急激な速度で進んでいます。アメリカは金利引き上げなどでインフレの抑制に努めていますが、この流れをコントロールすることは困難でしょう。長らくデフレ下にあった日本経済も世界経済のインフレの渦に飲みこまれてしまった以上、今後も構造的な物価高騰が続くものと思われます。
◆伸びない賃金と悪循環
もう一つ日本の構造的問題は、物価高騰に見合った賃金上昇が当面見込まれないことです。円安による為替差益によって、一部の輸出大企業は過去最高益を記録していますが、国内売り上げを中心とし、多くの雇用を支える中小企業は、物価高騰によるコスト増加を売り上げ増で補うこともできず、賃金を十分に上昇させる余裕がありません。長引くコロナ禍で1~3月期のGDP成長率も再びマイナスに転落しています。コストは上昇、賃金は伸びず消費は冷え込むという悪循環により、日本経済は今後さらなる失速が予想されます。
◆今こそ積極財政への転換を
このような構造的な物価高騰と、それに相反する賃金の停滞に対して政府に求められるのは、否応なしの積極財政です。政府は依然として2025年度におけるプライマリーバランスの黒字化というおよそ不可能な目標に固執し、借金は悪という刷り込みを止めようとはしていません。しかし、ここまで経済の構造転換が進んでいるのに、デフレ時代の発想のままの財政政策では、待っているのは縮小再生産だけです。「借金は将来世代へのツケ」という凝り固まった発想から、「借金による成長への投資をしないことこそ未来へのツケ」という発想へと転換しなければならないと考えます。
その点で、政府が提出した補正予算案は総額2.7兆円と非常に小規模で、ガソリン補助金など特定の事業にへだたり、総合的な経済対策として極めて不十分なものです。賃上げ補助、子ども手当増額など、未来のための大胆な財政支出が今こそ必要です。補正予算審議、そしてその先に控える参院選に向けて、積極財政の主張を強めて行きます。
スタッフ日記「幻の鉄道」
先日、新大宮駅から佐保川沿いを歩いている時、何気なく佐保川の川底を覗くと、幻の鉄道と呼ばれている「大仏鉄道」の痕跡である橋脚跡があるのに気付きました。大仏鉄道記念公園のすぐ傍にあり、レンガ積みの様式であることが確認できました。
1898年に開業し、かつて奈良駅と加茂駅を結んでいた大仏鉄道。調べてみると、わずか10年足らずで廃線となったらしく、既に100年以上の月日が経ってもなお「大仏鉄道ハイキング」「幻の大仏鉄道・遺構めぐり」など様々なイベントが数多く開催されていることにロマンを感じました。
ポスター張り替えの途中に記念公園で休憩していると、ハイキングで加茂から来られた方にお会いしました。10年ほど前、一度大仏鉄道ブームがあって、その時はまだ中学生で興味がなかったが、加茂市には数多く大仏鉄道の遺構が残り多くのイベントも開催されていることから、奈良の大仏駅跡地が気になって遺構めぐりのハイキングをされていたそうです。
当時の大仏駅は、東大寺大仏殿の最寄りの駅として、関西鉄道が奈良駅との使用交渉に時間がかかったために仮設的に造られたそうです。当時、仮設的に造ったつもりが大仏殿参拝には便利な駅として、東海、伊勢方面からの観光客であふれたそうです。しかし、奈良山丘陵の急勾配と大量に消費する石炭、それに重ねて途中で停車する度に乗客や近所の法連村の人たちが手押しで動かすなどかなり悪戦苦闘したみたいです。
奈良から加茂間も開通し鉄道国有化になり廃線になった幻の大仏鉄道、休日には大仏鉄道遺構ハイキングをしようと思います。(よっちゃん)
The post 第1032号 物価高騰下の財政政策 first appeared on 馬淵澄夫(まぶちすみお)奈良県第1区選出 衆議院議員.