□■注視が必要なマイナス金利解除

 日本銀行は本日の金融政策決定会合でマイナス金利を解除した。「マイナス金利の解除」と一言で見出しになっているが、今回の金融政策の変更は以下のように多岐にわたる。

1. 金融機関が日本銀行に預ける当座預金の一部にマイナス金利を課していたが、これを解除し、超過準備に対し0.1%の金利を付利する。

2. 政策金利(無担保コール翌日物)の金利を0から0.1%程度に誘導する。

3. 短期金利と長期金利を操作する長短金利操作(イールドカーブコントロール)を撤廃する。

4. これまでと同程度の長期国債の買い入れを継続する。

5. 上場投資信託(ETF)などの新規買い入れを終了する。

この中で、金利の関連では、1.の当座預金の一部にマイナス金利を課すことを解除するとしたが、この政策がスタートしたのは2016年1月である。また、3.のイールドカーブコントロールを導入したのは同年9月である。一方、量的な側面を見ると、5.にあるように2010年から始めていた上場投資信託(ETF)の買い入れは今回廃止され、他方、4.にあるように長期国債の買い入れは継続するという。

今回の決定で何が変わるのかをすこし考察してみよう。2016年1月に導入されたマイナス金利が解除されることにより、金融機関が日本銀行の当座預金に預け入れることにより得る利息収入は上昇する。一方、長短金利操作は、以前、指摘したように金融機関のための緩和であるが、これが撤廃された。しかし、日本銀行は今回の政策決定に先駆け「隠れテーパリング(隠れ量的緩和縮小)」と呼ばれる正常化の動きを行ってきた。そのため、金融機関も今回の決定により、急激な変化を求められることはないであろう。他方、マイナスに推移していた無担保コール翌日物が今後、プラスになることが見込まれている。長期金利も今後、上がりやすくなるため、住宅ローンの金利は上昇する方向となろう。

量的な面では、ETFの買い入れが停止されるが、国債の買い入れは継続するという。量的には引き締めの方向である。ここで注意をしなければいけないのは、日本銀行が、いままでと同様の国債買い入れを、決定文通りに実行するかである。日本銀行は2016年9月に長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入した際、「量的な緩和を継続する」としながら、ステルス緩和縮小と報道されるように、長期国債の買い入れのペースを緩めた前科がある。仮に日本銀行が長期国債の買い入れのペースを緩めれば、量的には大きな引き締めとなる。

以上のように考えてみると、今回の決定は、量的な側面を中心に日本経済にとっては、引き締め的な効果をもたらすであろう。

日本経済は、実質賃金の低下による消費の低迷に直面しており、2月の月例経済報告でも下方修正をした。確かに、足下では春闘で賃上げが見られるが、これが、地方の中小企業まで含め、日本全国の動きになるのか、注視が必要だ。決して楽観できる状況ではない。そのような中での引き締めである。

 今後、日本経済に暗雲が立ち込めた際には、日本銀行は長期国債のさらなる買い入れを進めていかなければならない。

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