東京高等検察庁の黒川弘務検事長が、新聞記者らと賭けマージャンをしていたことを認め、辞職しました。コロナ禍で国民が苦しむ中、犯罪にあたり得る行為を現役の検察幹部が行っていたことは全くの論外で、辞職は当然ですが、一連の問題は単に黒川氏個人の問題ではなく、検察と政府・メディアの癒着関係を浮き彫りにするものです。
◆政治と検察の共存関係
検察官は、犯罪捜査を行い、事件を起訴=裁判に持ち込むかどうかを決定する権限を持ちますが、捜査をどのように進め起訴するか、その決定に明確な基準があるわけではなく、検察官、ひいては検察上層部の裁量に委ねられています。それゆえ、現役の総理大臣をも逮捕できる権限がある一方で、政治家の疑惑に関して検察が捜査や起訴をしなかった場合には、事実上問題ないという「お墨付き」を与えることにつながり、疑惑を持つ政治家にとっては、敵にも味方にも成り得る存在なのです。
かつては安倍総理の大叔父にあたる佐藤栄作衆院議員に対する収賄容疑の捜査が、当時の法務大臣の指揮により中止されたことがありました。さすがに今ではそのようなあからさまな妨害は考えられませんが、森友・加計・桜を見る会問題、河合前法務大臣夫妻の買収疑惑など、数々の疑惑を抱える安倍政権にとっては、「味方」である黒川氏にポストを与えて定年も延長することで、捜査への忖度を期待していたと疑われても仕方ありません。
◆検察のメディアコントロール
今回、新聞記者が黒川氏を「接待」していたことから、検察とメディアとの関係も問題となっています。検察と報道機関の距離があまりに近く、メディアが検察の広報機関になってしまっているのではないかという問題です。刑事事件に関する捜査情報や証拠は検察・警察が独占的に握っており、担当弁護士ですら起訴されるまでは入手できません。まして特捜が絡むような政治家事件についてメディアは検察・警察に情報を頼る他はなく、結果としてコネクションが築かれ、よく報道にある「関係者の話によると」という匿名のリーク記事が、真偽の検証不可能のまま書かれ、世論が検察に都合よく誘導されていく事例が多く見られます。
さらに、安倍政権は数々の疑惑に対し国会審議でもまともに答えようとせず、メディアには取材制限や圧力とも言える態度を見せています。こうした状況では、ますますメディアの記事が、政府の意を受けた検察のリーク情報に頼らざるを得ないという事情があるのです。
◆情報コントロール打破へ
つまり、構造的問題として、国民が大きな関心を持つ汚職などの刑事事件について、国民が得る情報は、検察とその背後にある政府の意を受けたメディアが発信したものである場合が多く、知る権利が制約されています。検察と政府・メディアの癒着関係を変えるためには、政府による説明責任を明確にし、捜査関係者による安易な匿名リークを否定し、誰が責任を持って情報を発信したのか、情報の真偽が検証可能なシステムを作ることが必要です。野党は今回の問題に関し、予算委員会での集中審議を要求しています。政府の情報コントロールという本質に踏み込んだ議論を行いたいと思います。
スタッフ日記 「観光地の課題に」
私たちの日常は大きく変わりました。でも、今こそ共に接し、繋がることの喜びを改めて実感できる時なのかもしれません。私はむしろ社会が大きく変われる、そんな時だと感じることもあります。
日常の中での新たな繋がりの一つ、ネット上で友人とテレビ電話をつないで飲み会を開く「リモート飲み会」は若者の多くの関心を得ています。さらに、スマートフォン片手に会議を開催する「Web会議」は広く定着し、今では行政をはじめ、あらゆる企業で活用されています。これからの繋がり方の新しいスタイルとも言えるでしょう。
緊急事態宣言解除を受けて、奈良の街にも人との繋がりが少しずつ戻ってきました。
しかし、奈良にすぐさま外国人観光客が戻って賑いを見せるわけもなく、当面の課題は年内までの観光業をはじめとする地元経済への保障です。
観光地に隣接する喫茶店やカフェなどの飲食店には、休業補償の対象とならない店舗も多いのが現状です。特に、ならまちは、奈良の観光ブランドとしてカフェや雑貨店巡りをしながら古い町並みを楽しむスポットとして注目されてきました。こうした若年層が携わるこれから奈良の魅力にも、いち早く救済策が必要です。
愛知県一宮市ではカフェ発祥の地として、全ての飲食店に対し休業補償として協力金を支給し、また、香川県ではうどん店を県の観光資源として捉え、同じく協力金を支給する等、地方の課題に取り組む自治体の先例があります。
観光地として他府県にはない課題に目を向け、奈良県独自の政策が保障なき自粛とならぬよう今後の動向に注目していきます。(特命係長)