『M9地震に備えよ  南海トラフ・九州・北海道』から伝えたい

我孫子市選出・千葉県議会議員の水野ゆうきです。

令和6年台風第7号の接近に伴い、行政をはじめ関係者は眠れない1日を過ごされたと思います。職員から随時ご連絡をいただいておりました。

 

千葉県では人的被害及び住家被害は覚知されておらず、県内全市町村で避難所閉鎖済みです。
今朝、知事が県警ヘリにより上空から県内の状況を視察するとともに、県警ヘリ及び千葉市消防ヘリによる情報収集を行ったとの報告がありましたが、上空から見た限り、家屋被害や土砂崩れ等は確認されなかったとのことです。
また、県内全域の大雨・洪水・暴風警報が解除されたこと、天候が回復し、今後、被害のおそれがないことから、災害対策本部 第一配備体制は解除となっています。

 

自然災害が多く、私の政治家としての仕事も『防災』が大きな柱になっていることは間違いありません。

 

特に日本は地震大国です。

8月15日17時に政府からの南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表に伴う「特別な注意の呼びかけ」が終了しましたが、いつ地震が来てもおかしくない状況であることは常々、私は議会やあらゆる機会を通じて訴えています。

 

私は抜歯後、数日お休みをしている間に多くの本を読みました。

小説を多く紹介していますが、もちろん仕事に関する書籍も多く読み、今後の政策や議会質疑へと活かそうと思っています。

 

そして、「防災・減災」を政策にし、議会で発言する政治家には読んでいただきたい1冊がこちらです。

 

『M9地震に備えよ  南海トラフ・九州・北海道』

鎌田 浩毅 氏(著)

 

 

京都大学名誉教授の鎌田 浩毅先生の新書です。

今後、東日本大震災と同じマグニチュード9の巨大地震が、三つ(震源域はそれぞれ、千島海溝と日本海溝、南海トラフ、九州・沖縄沖の琉球海溝)起こる可能性があるとして、他にも首都直下型地震や噴火についても解説されている本です。

今月に出版されたばかりなので、能登半島地震などの分析を踏まえ、最新の情報が詰まっています。

 

私は県議会でも総務防災常任委員会に所属し、防災・減災対策には並々ならぬ力を注いでいます。

それはこの本でも明確に書かれている通り、「過去の地震活動期の地震の起こり方のパターンを統計学的に求め、それを最近の地震活動のデータに当てはめてみると、次に来る南海トラフ巨大地震の時期が予測できる。自身活動の統計モデルからの次の南海地震が起こる時期を予測すると2038年ごろという値が得られる」(P109)からです。

 

発生確率予測は毎年更新され、今後30年以内にM7クラスの首都直下地震が発生する確率を70~80%としています。

内閣府では犠牲者は最大2万3千人、142兆円としていますが、土木学会では復興するまでの20年間の長期的な経済と資産の被害が総額1001兆円にのぼるとの推計も発表しています。

首都直下地震直後は約720万人が避難し、そのうち290万人が避難所生活を余儀なくされるのが試算されています。

 

南海トラフ巨大地震では、

〇九州から関東まで広範囲に震度6弱以上の大揺れをもたらし、震度7を被る地域が10県にわたる。

〇災害廃棄物の総量は約2億2000万トンに達する。

〇総人口の半数6800万人が被災する。

〇被害総額は220兆円(内閣府)。

〇被害規模は東日本大震災より一桁大きい

などといった具体的な数値が書かれています。

 

地震のメカニズムや発生予測が科学的根拠や過去の地震統計・分析をもとに解説されており、必ず来るであろう地震に対して警鐘を鳴らす1冊です。

 

特に千葉県の政治家として注視すべきは千葉県東方沖で発生しているスロースリップ。これは私も議会で取り上げています。

 

首都圏の下には3枚のプレートがあり、世界的に地震が起きやすい変動地域にあります。

 

【プレート解説】

日本は4枚のプレートに囲まれています。

太平洋プレート(海のプレート)

フィリピン海プレート(海のプレート)

北米プレート(陸のプレート)

ユーラシアプレート(陸のプレート)

陸のプレートの数百キロメートル下に海のプレートが沈みこんでおり、その境界にある深い溝状の地形のことを「海溝」や「トラフ」と呼んでいます。

首都圏には陸のプレートである北米プレートがあり、その下に海のプレートであるフィリピン海プレートが南から、その深部に太平洋プレートが東から潜り込んでいます。

 

千葉県東方沖では陸側と海側のプレートの境界がゆっくりとずれ動く現象「スロースリップ」が起きています。

今後、このスロースリップに誘発されて、強い地震が襲ってくる可能性があります。

東日本大震災では、本震が起こる2か月前からスロースリップが発生し、巨大地震が引き金となった可能性に言及しています。

千葉県においてもスロースリップが発生したあとに比較的大きな地震が起こっているのです。

 

【激しい揺れが起こる要因】P103

≪前提≫海のプレートは陸のプレートの下にすんなり沈みこんでいるのではなく、陸地の下へ力づくで無理やり押し込まれている。

①陸のプレートと海のプレートの境目でひずみが蓄積

②岩石が耐えられる限界に達すると限度を超えた接合部分から一気に壊れて巨大地震発生する。

 

改めて地震がどのようにして起こるのか、今、すべきことはなにか、などを再考するのに重要な内容が満載です。

地震によって誘発される可能性のある噴火、そして、石油タンクのスロッシングによる火災。

 

今後起こりうる地震に備え『減災』の取り組みを進めることは必須です。行政の立場では道路や港湾の耐震化推進や堤防整備、電柱の地中埋没化などが挙げられており、千葉県でも取り組んでいるところです。

 

そして何より大切なのが私たち一人一人が災害に対する正確な知識を身に着け、「自分の身は自分で守るために備える」こと。

 

著者は『防災の鉄則は常に「災害が起きる前に準備すること」』を訴えています。

 

そして地球科学の専門家である著者が警鐘を鳴らし続けるのは『知識は力』であることからも、自分の「知識」を伝えることで国民を救う、そして専門家としての自らの使命を果たそうとしていることがわかります。

 

この本を通してメッセージを受け取った一読者として、政治家である自分の使命は県民の命を守るために、減災政策を推し進め、一人でも多くの県民の現状を発信し、備えを促していくことだと改めて気を引き締めました。