こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
緊急事態宣言の延長有無が大きな焦点になり、民間企業ではテレワーク・オンライン会議が急速に進んでいます。今日はヘッドセットで耳が痛くなるほどオンラインMTGをやっていました…。
しかし、そうした流れとほぼ無縁なのが国会・政界であります。
そこは「3密」国会が危ない!(NHK政治マガジン)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/34069.html明らかに「3密」状態の中で、高齢者を多数含む数百人が長時間、肩を寄せ合って審議をしている。
誰がどう考えても真っ先にオンライン化するべき国会ですが、憲法56条に「出席」に関する規定があり、これはオンラインを認めていないと解釈されているため、完全なボトルネックになっています。
憲法第56条両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
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ただし「解釈の問題で、オンラインを出席とみなしても違憲とまでは言えない」という専門家もいます。よって現在は、本会議や委員会が成立する「定足数」ギリギリの数だけ出席して、採決以外の時は議員は部屋のテレビで国会中継を見るなど、苦し紛れの弥縫策で国会審議が続いているのが現状です。
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国会の話はまた別の機会に詳しくさせていただくとして、では地方議会の場合はどうなのでしょうか?
歴史ある英国議会はハイブリッド方式のオンライン議会実現!
国会は気配すらないので、大阪で先行させようとしてるが、自治法上の出席は議場に参集、自治法での規定ない委員会でもオンライン出席は認めないという総務省。
英議会 テレビ会議で審議 約700年の歴史で初 | NHK https://t.co/7bcncE3L5m— 守島 正 (大阪維新の会 政調会長 大阪市会議員) (@t_morishima0715) April 23, 2020
現在、大阪市議会からオンライン化を進めようという動きを、大阪維新の会・政調会長の守島市議が中心となって進めているのですが、こちらは法律(地方自治法)が壁になっています。
地方自治法 第113条第百十三条 普通地方公共団体の議会は、議員の定数の半数以上の議員が出席しなければ、会議を開くことができない。(略)
こちらの「出席」についても憲法と同様、オンラインは認められないというのが政府(総務省)の正式見解です。
「え、そんなことはどこにも書いてないじゃん!法解釈でいけるでしょ?」
と思うのですが、全国の自治体が参考にしている「標準会議規則」というのがありまして(広域自治体・基礎自治体バージョンがある)、その中では「議場にいる」ことが明記されています。
例:
標準都道府県議会 会議規則 第78条表決宣告の際、議場にいない議員は、表決に加わることができない。
こういう運用でずっとやってきたんだから、突然「オンライン」が技術的に可能になったからといって、昔からある法律に当てはめてOKだと解釈するのはさすがに無理があるよね、というのが政府(総務省)の言い分。
これは一定程度、理解できます。よって残念ながら地方議会が本会議をオンラインで行って審議・採決した場合、その内容は法的に無効ということになります。法改正をするしかない。
では、地方議会にある各種の「委員会」はどうなのでしょうか?
審議時間が長いのは本会議場で行われる本会議ではなく、むしろ各委員会ですから、こちらだけでもオンライン審議・採決が可能になれば、地方議会の「3密」状態はかなり軽減されます。
当初、電話で総務省に問い合わせをした際は「本会議も基本的に委員会と同じ扱いです」という説明でした。しかし、これは納得ができません。
というのも地方自治法第109条によれば、「委員会」出席についての定めは法にはなく、むしろ「条例で定める」と地方自治体の裁量が明記されているからです。
地方自治法 第109条第9項
前各項に定めるもののほか、委員の選任その他委員会に関し必要な事項は、条例で定める。そこで、守島市議にもオンラインでPC画面の中から加わっていただき、総務省と直接細かい意見交換をするという本日の流れになりました。
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結論から申し上げますと、
「委員会も本会議と同様であると考えられるものの、委員会については各地方自治体が条例等でルールを定めることは妨げられない」
という見解を得ることができました。
つまり、委員会は条例や会議規則できちんと「出席」の定義を定めておけば、オンラインで審議・採決を行っても法的に有効だ・違法ではないということです。大事なところなので3回くらい確認しました。
諦めが悪い、音喜多・守島コンビ。おかげで地方自治体の自立性が認められる見解を頂けました。大阪市の場合は、大阪市会会議規則というもので委員会の出席規定は定められており、市独自で出席の定義を決めても違法とはならない旨の回答を受けました。
早速、オンライン委員会の設計を進めていきます。 https://t.co/GiA990wYet— 守島 正 (大阪維新の会 政調会長 大阪市会議員) (@t_morishima0715) April 23, 2020
先に申し上げたように、地方自治体には「標準会議規則」というものがありますが、あくまでそれは標準項目であり、特定自治体が独自の会議規則を定めても法的にはなんら問題ありません。
これは、非常に大きな前進です。先進的な自治体の地方議会からオンライン審議・採決を導入していけば、一気にその流れが日本全国に波及していく可能性があります。
大阪市議会でも、議会事務局が
「本会議も委員会も、オンライン化は困難です。法的に無効になると総務省が言ってます」
と難色を示されていたようですが、委員会は条例・規則でクリアできることが明らかになったわけですから、もう心配には及びません。
まずは委員会からオンライン化を進めていき、格式が高い本会議はきちんと全員出席で採決。
この形式は、伝統や慣習にこだわるベテラン議員も納得がしやすい「落とし所」になるのではないでしょうか。
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そしてそうなれば、国会だけが「高みの見物」をして変わらないというわけには行かないでしょう。
中長期的に法改正・憲法改正まで実現できれば、国会審議の本会議まで含めてすべてオンラインで完結できる未来が見えてきます。
もちろん、「憲法は改正するまでもなく、解釈変更で充分だ」という見解を政府が出すのであれば、それはそれでかまいません。
まずは国会法を変えて委員会からオンライン化を進めていき、憲法解釈の既成事実を作って軟着陸するというのもありえるのかも…?
いずれにしましても今回、政府(総務省)の地方議会に対する見解が明らかになったことで、大きな可能性が拓けてきました。
ぜひ地方議員の皆さまは、ご自身の自治体の条例・会議規則の内容を確認いただき、その変更によってまずは委員会から「オンライン化」を積極的に進めていただければ幸いです。
私も引き続き、国政の場からこの流れを後押しして参ります。
それでは、また明日。