山本太郎氏の「都債15兆円発行プラン」で、東京都はギリシャ化する?実現可能性に疑問大

こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

本日、れいわ新選組の山本太郎氏が都知事選への出馬表明をされました。おそらく出ないだろうという私の読みは見事に外れました、ごめんなさい…。

山本太郎氏、東京五輪「中止だ」 都民に10万円給付案:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN6H6G0NN6HUTFK00Q.html

オリパラ東京大会の中止や、都民全員に10万円給付、学費無料など振り切った政策を打ち出し、それらの財源は15兆円(!)もの都債(地方債)の発行でまかなうとの公約内容。

この都債の発行については、現在財政金融委員会に所属する国会議員であり、かつては都議会議員としてまさに都債の問題に取り組んできた立場から一言、見解を述べておきます。

結論から言えば、国債と異なる地方債で財政出動政策を行う発想は荒唐無稽であり、将来にツケ(借金)を先送りする可能性が極めて高く、下手を打ったらギリシャ化しかねない悪手だと思います。

国が国債を発行して財源を調達できるのと同様に、地方自治体も地方債を発行してファイナンスすることができます。

ただし最大の違いは、地方は国と違って中央銀行や通貨発行権を持たないことです。

簡単に言えば、地方自治体の財政は独自通貨を持たないギリシャのような国に近く、身の丈(収入)にあった財政運営をしなければ普通に破綻します。

通貨発行権や金利操作などの金融政策である程度はコントロールができる国債と異なり(その「程度」については議論がある)、地方債はほぼ純然たる借金であり、現役世代が使えばその分は将来世代が返さなければならないというシンプルな構造になっています。

山本太郎氏は宇都宮陣営と政策の近似性を認めながら、最大の違いをこの「財政に対する考え方」であるとしていますが、それは

「将来世代に借金を背負わせてでも、目の前の都民にお金を配りまくるかどうか」

の違いであると言えます。

そして実現可能性についても疑問符がつきます。

「総務省に確認して、都があと20兆円ほど都債を発行できることを確認している」

との発言もありましたが、これはあくまで理論上の話。

他の都道府県と比べて借金が少なく、あと20兆円ほど借金をしても財政再建団体には転落しないということでしょうが、そもそも一気にそんな多額の地方債を発行して買い手がつくのでしょうか?

政府が国債を大量に発行できるのは、日銀が協調する金融政策によってそれが回収できるからです。

そうした担保もなくただ地方自治体が「都債を発行しますから、みんな買ってね!!」と言っても、独りよがりにしかなりませんし、一気にマーケットの信任を失う可能性もあるでしょう。

これに対する山本太郎氏の反論として考えられるのは、

地方債は日本銀行に買い取らせれば良い。東京都から国を突き上げて動かすのだ!」

というものです。しかし、それはあまりにも分が悪い賭けであると言わざるを得ません。

都が莫大な借金をした後に、目論見通りに国が動かなければ、そのツケを背負うのは将来と現在の都民です。

加えて、他の地方自治体が発行している地方債の動向に負の影響を与える可能性もあります。

都債ばかりがマーケットに溢れることによって、他の地方債が買われなくなり、東京都が地方に迷惑をかけるリスクがあるわけです。

さらに言えば根本的に、地方自治体は国と異なり人口移動が激しいので、国債と同じ考え方で安易に将来の財源を先食いするのは受益と負担の観点から是認されるのかという問題もあります。

参考過去記事:
世代間格差が拡大し、人口流動が続く中、財政黒字の東京都が「都債」を発行する必要はあるのか問題

https://otokitashun.com/blog/daily/19156/

というわけで、ざっと検証しただけで「都債15兆円発行する、20兆円まではいける」という山本理論には問題が山積みです。

いったん財政規律が緩めば、中央銀行のない地方自治体は金融政策にも頼れず、ずるずると財政が悪化をしてギリシャ化する可能性すら否定ができません。

「目の前にある危機に対応しなければ、将来も何もないじゃないか。いまはお金を出すべきだ!」

というのは非常に魅力的な考えです。しかしそれは裏を返せば「とにかく今を凌げば良い」という無責任な考え方でもあり、バランスを欠けば単なる将来への先送りになります。

いずれにせよ、国政でも財政政策については活発な議論が行われる中、こうした論争の呼び水となり、都民の選択肢が増えることそのものは歓迎したいと思います。

首都東京の未来のために、実現・持続可能な財政政策や成長戦略を描けるかどうか。

18日からスタートする都知事選挙で、我々も存分に論を闘わせていく次第です。

それでは、また明日。

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