こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
菅首相の任命拒否に「違法性」?学術会議の推薦、過去答弁との矛盾。解釈変更はあったのか(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/gakujutukaigi菅総理・内閣が学術会議メンバーの任命を拒否した件が大きく注目を集めています。
菅内閣発足後、初の「失点」ということで、野党やいわゆる左派知識人たちも一斉に声を上げている状況です。
ここまでの政府の対応・説明を見ると、私としても残念ながら十分に納得のいくものとは思えません。
ここからは大きく2つに論点を分けて議論が進んでいくことを期待し、政府の対応を臨むものです。
●菅総理・内閣による任命権限問題と情報公開
菅総理は過去に「権力の源泉とは人事権である」という内容を度々発言されているとのことで、今回の一件も
「法律で規定されており、予算を政府が出している以上、人事権というのは政府にあるのだ!」
ということを明確に示す(そして権力基盤を強固にする)ために行ったものと思われます。
しかしすでに冒頭の記事でも指摘されている通り、これは「任命権は形式的なものにすぎない、任命拒否は行わない」としていた過去(1983年)の国会答弁と明確に矛盾します。
法解釈を変更したというのであれば、その旨を丁寧に説明し、また解釈変更を意思決定した際の行政文書を公開するべきですが、政府からそういった対応は現時点で見られません。
菅内閣は、日本学術会議の件にしっかり対応しないと、また酷い国会が繰り返され、経済改革も足を引っ張られるでしょう。学術会議の改革を断行する政治意志があるならサポートすべきですが、政権に批判的な学者に対する単なる思い付きの制裁なら、菅義偉内閣は短命になりかねない、と心から懸念します。 https://t.co/Eg0ZQHMjBn
— 足立康史 (@adachiyasushi) October 2, 2020
学術会議に係る任命問題を私が批判するのは、維新以外の野党のように菅政権を機能不全にしたいからではなく、菅義偉内閣には長期政権・本格政権として安倍総理に出来なかったデジタルや中小企業、東京一極集中是正はじめ経済改革を断行してほしいから。こんなことで国会が席巻されたら、日本は終わる。 https://t.co/Q88A2LELxc
— 足立康史 (@adachiyasushi) October 2, 2020
足立議員が指摘するように、このまま臨時国会に突入すれば、経済政策や行政改革はそっちのけでこの人事の話に議論が集中するでしょう。
政権や政治家に持っている「政治力・改革エネルギー」は有限で、大きな行動を起こすたびに減少していきます(選挙をやると回復する)。
人事権を誇示して政権基盤を盤石にしようと意図したのかもしれませんが、その貴重な資源を学術会議の問題に突っ込んだのは、個人的には悪手のように思えます。
ただもう手を突っ込んでしまったのですから、これを気に学術会議の実態などについても切り込むべきです。というわけで次の論点。
●学術会議などのアカデミア機関の実態は。形骸化していないかどうか
日本学術会議がどのような役割を果たしているのか、分かっている人は少ないと思う。かく言う私も政権に入るまでは、よく分かっていなかった。パブリックな存在でありながら、会議の見解がどの程度、政府の政策を縛るのかも不明確。会員および経験者の声を聞きたいところ。 https://t.co/FAVtofZEHB
— 細野豪志 Goshi Hosono (@hosono_54) October 2, 2020
そもそもほとんどの国民は、「日本学術会議」なる存在を知らなかったと思いますし、かつて政権内にいた細野議員ですら「その政策提言がどの程度反映されるのかわからない」と吐露しています。
学術会議自体の存在意義を確認すべき。今は権威だけで押し通せる時代ではない。このような団体が税の使い道を決定できる根拠は何なのか?たっぷりの税金を受けている大学において軍事研究を禁止する決定ができる根拠は何なのか? https://t.co/Q6U05gyNCP
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) October 2, 2020
学術会議も学士院も何する機関か、ガバナンスどうか、費用対効果など積極開示すべき。特に終身年金制度に正統性があるか?海外比較含めた説明が必要だろう。その上でなら、人事への政治家の関与には一定の節度が必要と主張できる。でないと長老学者の既得権益の維持装置といわれても仕方ない
— 上山信一 Ueyama (@ShinichiUeyama) October 2, 2020
橋下氏や上山氏が指摘する通り、改めて多額の税金が投入されているこのアカデミア機関が適切に機能し運営されているのかどうかを精査する必要があると思います。
私も今回、初めて調べて知りましたが、日本学術会議には年間約10億円、その兄弟組織である日本学士院には年間約6億円が支出されています。
ものすごくざっくり言うと学術会議は現役第一線の学者さんたちの組織、学士院は一線を退いた大御所たちの相互扶助組織といったイメージです。
俗っぽくいうと学者の集団天下り受け皿とみえなくもない。学術会議から学士院会員になり終身年金いただく。その意味、価値、存在意義すべてが見直しの時期。 https://t.co/0J83WIBVzw
— 上山信一 Ueyama (@ShinichiUeyama) October 2, 2020
予算の内訳を見ると、日本学士院は約6億円のうち、3分の2にあたる約4億円が会員の「終身年金」への支出と経費に充てられています。
いくら学術的に功績のあった人を優遇するとはいえ、この時代に終身年金…もっと若手研究者に投資をした方が良いのでは。。
一部の人々が指摘・懸念しているように、メンバーの推薦基準が外部から見ると不透明な学術会議が身内のサークル化しており、その学術会議メンバーが学士院に「天下り」をして終身年金をもらう仕組みになっているとすれば、税の使いみちとして問題があります。
このあたりの実態を踏まえた上で、菅総理が
「だからこそ人事権を発動し、現状を打破するのだ!」
と言うのであればそこには一理ありますし、はっきりとその旨を説明するべきでしょう。
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しかしながら現状としては、上記の2つの論点(意思決定の情報公開、アカデミア機関の意義)が2つとも曖昧なまま「任命拒否」だけが独り歩きをしている状態です。
繰り返しになりますが、ここで政権発足時には十分に充電されている「改革エネルギー」をいたずらに浪費するべきではありません。
それなりの覚悟をもって「任命拒否」というカードを切ったのでしょうから(思いつきだったら本当にヤバい)、菅総理・内閣には適切な情報公開と今後の対応を望み、我々も提言をしていきます。
本件は動画でも解説し、下記に参照したデータもまとめておきます。
それでは、また明日。
【以下、調べた参考データまとめ】
■日本学術会議 ・組織:内閣総理大臣の直轄(内閣府) ・根拠法:日本学術会議法 ・URL: http://www.scj.go.jp/ja/scj/index.html ・予算:約10億円(令和2年度予算案)https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r02/yosan_gai_r02.pdf■日本学士院 ・組織:文科省管轄 ・根拠法:日本学士院法 ・URL:https://www.japan-acad.go.jp/japanese/about/access.html ・予算:6.1億円(令和2年度) https://www.mext.go.jp/content/20200203-mxt_kaikesou01-000004369_1.pdf ■日本学士院の年金について ・根拠法:日本学士院法 第九条 (年金)「会員には、予算の範囲内で、文部科学大臣の定めるところにより、年金を支給することができる。」 ・予算:4.3億円(令和2年度)← 上記6.1億円のうち4.3億円が年金 ・URL:https://www.mext.go.jp/content/20200814-mxt_kaikesou02-000006053_0211.xlsx