こんばんは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。
昨日に引き続き、いわゆる水道民営化について論じていきたいと思います。
本件は今後の行政改革の根幹に関わってくる重要施策にもかかわらず、本来は推進の旗を振らなければならない与党にやる気が感じられないので、ちょっと頑張って論陣を張っていく次第です。
昨日の記事:
「水道民営化で料金が上がる!」はミスリード。浜松市を事例に、一部民営化の意義を考える
https://otokitashun.com/blog/daily/21436/上記の記事では、「水道を民営化すると水道料金が上がる!」というロジックは完全に間違っているいうことをお示ししました。
本日は「水道民営化は世界中で失敗中!」「再公営化こそが世界の潮流」という主張について、詳しく検証&論破していきたいと思います。
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例えばこちらの記事が間違った主張・ミスリード理論の典型です。
【水道法】民営化、欧米でも失敗続きー安倍政権が水道事業を売り飛ばす暴挙、海外企業とも癒着
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20181206-00106702/多くの方々がこちらの記事を論拠に、「世界中で水道民営化は失敗している!」とSNS発信しています。
執筆者がインタビューしている人が労働組合の書記次長という時点で色々と察せる点は置いておくとしても、とりわけ「水道事業の民営化の失敗、世界で235例」あたりは、非常によく使われるまやかし数字ロジックです。
「235」なんて書くといかにも多く見えますし、実際にその数字が(おそらく執筆者の狙い通りに)独り歩きしているわけですけど、そもそも全体の母数から考えなければこの数字にはなんの意味もありません。
世界全体に民営化・公営化の対象となる水道事業がいくつあるのかは調べきれなかったのですが、例えば「民営化の失敗例」としてよく挙げられるフランスの数字を見てみましょう。
2010年~2015年の間に「再公営化」された件数は68件。これに対して水道事業の総数は約15,000件あるとのことで、全体の総数から見れば0.5%未満です。
加えて、逆に新たに民営化(コンセッション化)された件数もちょうど68件とのことで、この一事をもってしても「公営化が世界の潮流」「民営化は失敗ばかり」とは到底言えないことがおわかりいただけると思います。
参照論文:
フランスの上下水道事業の再公営化・コンセッション化の状況について ~フランス公的機関報告書から見る実情~
https://www.eyjapan.jp/industries/government-public/infrastructure/column/2019-02-15.html■
さらに付言すると、そもそも民営化に至った経緯も日本と世界では(当然ですが)まったく異なります。
フランス(パリ市)の場合、公営で運営されていた水道事業があまりにもブラックボックスであり、問題山積みだったために民営化に踏み切ったと。
しかしながら民間運営事業者がこれまた適切な運営を行わなかったため、やむなく再び株式をすべて買い戻すという残念な経過を辿ったそうです。
参照記事:
水道民営化という言い方は誤解を生むと思うし生んでいる(杉山みきと大阪市議ブログ)
https://sugiyamamikito.com/bill/20181205/※この大阪維新の会の杉山みきと市議の記事は、非常にわかりやすく水道事業のコンセッション化についてのポイントがまとまっておりますので、ぜひ多くの方にご一読いただきたい!
ことほど左様に、「水道」という共通点以外は根本的に状況が異なるわけですから、自分たちに都合が良い部分だけを取り出して「水道民営化は失敗する!」と騒ぎ立てることが、いかにナンセンスであるかおわかりいただけるのではないでしょうか。
本件については折に触れてしっかりと情報発信していきたいと思いますし、日本でも水道事業の(一部)民営化の成功事例がしかるべき場所・タイミングに出てくることを期待し、後押しを続けていくものです。
それでは、また明日。