“赤ちゃんポスト”設置については都は慎重に慎重を期すべし

今年9月末に突如として都内医療法人による東京に赤ちゃんポストを開設する構想発表の報道がありました。

「赤ちゃんポスト」都内に設置を計画 2024年秋頃にも 2022年9月29日 日テレ

法人の所在する江東区・江東区医師会には、自由を守る会さんのへあや江東区議から、医療法人・病院事業を所管する東京都福祉保健局には、私から事実関係を確認したところ、江東区も東京都も全く関知しておらず、報道で初めて知った実態を把握しました。

東京都福祉保健局において「「赤ちゃんポスト」の利用に至る前にしっかり妊産婦を支援することが重要との基本スタンスは変わりません」との確認を得てTwitter等でいち早く情報発信していました。

かねてより、私は親が育てられない乳幼児を匿名で受け入れる所謂「赤ちゃんポスト」の東京での設置について区議会議員時代から取り組むこと10年。
熊本県熊本市慈恵病院による「こうのとりのゆりかご」事業視察もし、都議となってからは実施を初当選以来求めてまいりました。

ここに来たら助かるんだ…「こうのとりのゆりかご」 2012年9月2日お姐blog

10年間議会で質疑をしたり、専門家からヒアリングをした結果、私はまず都立病院でこの事業を進めることを提言してきましたが、前向きな答弁は得られずにきました。
ところが、東京都も江東区も全く把握しないままに法人が突如として構想を発表したことに強い危機感をもって、急ぎ私は11月8日に開催される厚生委員会で質疑をいたしました。

ここ数年来、赤ちゃんポスト設置については私しか質疑をしてこなかったというのに、その前日に突如として、都民ファーストの都議がこの件をマスメディアに語っていたことも今となっては、胡散臭さを感じざるを得ないと都民に言われても仕方のない状況。

都議会で「赤ちゃんポスト」議論へ 議員は「東京都の関わり大きい」と主張2022年11月8日

私も、質疑をしたというのに、都民ファーストの都議だけ事前にとりあげるということは、MXテレビに誰がリークをしたのでしょうか?

その伏線が本日ハッキリみえることになりました。

「赤ちゃんポストで都知事に要望書 医療法人、実施の検討求める」東京新聞 2022年11月22日

これまでも同法人と同調する区議らが慈恵病院を視察する様をメディアが報道していましたが、都民ファーストの都議たちが、こぞって小池知事に要望書を渡したのでありました。

なるほどね…。私が懐疑的かつ警鐘を促す質疑をすることは、これまでの動きから見てとって、慌てて都民ファーストの都議が質疑をかぶせ、満を持して今日の要望書手渡しとあいなったというわけでしょう。

同法人にお墨付きを与えて、我が党、私の、僕の政策実現!!とばかりの伏線に、本能的にお姐は気づいていたのか??
9月の報道以来確認を怠らず、お姐的にも満を持しての11月8日に行った質疑答弁を全文ご紹介いたします。

【厚生委員会11月8日“赤ちゃんポスト”にかかるお姐質疑答弁】
お姐「私は、身元を明かしたくない出産、出産後育てられないという女性の支援を率先して都立病院が行うべきと提案をし特定妊婦の出産を都立病院で求めております。令和2年度は都立・公社で60件、令和三年度の未受診妊婦の受入れ件数は合計で37件公社病院も含めますと39件でした。

「内密出産制度」を独自に導入している熊本市では同県慈恵病院で、身元を伏せての出産を望んだ妊婦の対応につき、新たに制度を利用した事例が8~9月に2例あったと公表されてます。いずれも西日本在住の成人女性とのことで、同病院が公表済みの制度を利用した出産は7例とのことです。

私は、かねてより、東京都及び児相、福祉保健局において、イニシアチブを持って、いわゆる赤ちゃんポストの積極的設置を都立、公社病院を中心とし、各病院への協力依頼をすべきと指摘と要望をしてまいりました。
都は、区市町村の支援窓口に繋げる、とうきょうママパパ応援事業等で支援する、前述の妊娠相談ほっとライン等を活用する、養子縁組が最善と判断した場合には、できる限り新生児のうちに委託できるよう、新生児委託推進事業を実施とのことです。
が、都での妊娠中、出産直後の養子縁組の実績はありません。熊本市と比較しますとこれでは、なにもやっていないと同じ事となってしまいます。
熊本にできてなぜ東京にできないという機運が高まる中、東京の医療法人が都内に設置する構想を進め2024年秋に産婦人科医院を開業し、ポストを併設する計画であることが報道されました。
内密出産についても検討するとも言われているようです。まず、東京都はこの医療法人としっかり連携を図っていたのかいなかったのか、経緯も含めた現時点までの状況を時系列で詳細にご説明下さい。

福祉保健局現時点(令和4年11月8日)において、当該医療法人から相談は受けていない。」
(お姐注:行政機関に一切相談や情報共有もせずにメディア公表するというのはいかがなものでしょうか?)

お姐「本来であれば赤ちゃんポストが設置されることは大歓迎ですが、ベビーライフ事件(お姐注:一般社団法人「ベビーライフ」が2020年7月に事業を停止し、代表(篠塚康智氏)と連絡が取れなくなる事態に。2012~18年度の7年間にあっせんした子どもは307人。このうち174人の養親の国籍が外国(米国68人、カナダ106人))についても、児相や都による養子縁組が進まない気運は批判が高まる中で安易に民間参入を促した結果海外に赤ちゃんがわたってしまったうえに、会社は解散、一時社長は行方不明になるというあってはならない事態となってしまいましたことから、新進気鋭の事業者には危機感を抱くものです。

慈恵病院のように、病室もあり産婦人科としての長い実績なによりも理事長・院長先生看護師はじめ、深い子どもへの愛情と福祉の精神がある法人とは明らかに今回手を挙げた法人は異なる背景をもっているものです。

熊本市と慈恵病院の連携状況を見ればわかるように、行政と赤ちゃんポストを実施する医療法人との連携は不可欠です。東京都はこの法人の事業開始を是とするのか、どのように対応していくのか?
同法人の所属医師会や法人のある自治体とは都は何かしら確認作業をしているのかも含めお答え下さい。」

福祉保健局「医療機関などが匿名で新生児を受け入れる、いわゆる「赤ちゃんポスト」については、その利用に至る前に妊産婦を支援することが重要である。
都は、妊娠相談ほっとライン等により、妊娠や出産に悩みを抱える妊婦等への相談に対応し、特に継続的な支援が必要な場合は区市町村の保健センター等につなげている。
今後、法人から申し出があった場合には、熊本市と慈恵病院との取組等も参考にしながら、区市町村などの関係機関と連携し、対応を検討していく。」

お姐「予期せぬ妊娠、特定妊婦の出産、特別養子縁組等に向けての対応策について、都立病院が積極的に支援、サポート、アフターケアをすべきと考えます。
児童相談所との連携は不可欠であることから、現状の連携体制及び現時点の特定妊婦に関しての都の所見は昨年も確認しておりますが、こうした民間病院も出てきましたことからも、都立、公社病院も積極的に対応すべきと考え所見を伺います。」

福祉保健局「都立病院は、児童相談所などの関係機関と連携しながら養子縁組等を含めた特定妊婦の育児相談などに対応」

以上

本日、当該医療法人とともに知事に要望を渡した地方議員の中には、この質疑前日に仕込んだかのようなMXテレビ取材を受けていた都民ファーストの都議もおいででした。
彼の当日の質疑は厚生委員会録画7:37:00あたりからです。
「(当該法人により)この事業を始まることを想定すると、都は相応の準備が必要。事業団体との相応の信頼の構築が望まれる。都としてどのように対応するか、検討すべき」
と、協力体制を呼び掛けていたから、私は本日の報道に心底びっくりしてしまいました。
まだ、「赤ちゃんポスト」構想を行政に確認もすらせずにメディア公表した事業者とともに地方議員が要望書を出してよいものなのでしょうか。

取組を進めるための都の整備を求める要望書はあってしかるべきかもしれませんが、特定の法人ありきでの要望書については私は懐疑的にならざるを得ません。

なぜならば、小池都政は「新進気鋭」のベンチャー事業者に安易に事業を任せて前述の海外へ赤ちゃんがわたってしまったベビーライフ事件、乳幼児強制わいせつ事件で逮捕者までだしたキッズライン事件、保育運営費を不正請求したグローバルキッズ事件を結果的に発生させしまってきたからです。

【お姐総括!】
かつて
日本こども縁組協会設立 民間団体で力を合わせて進みます! 2016年9月7日
このような、民間養子縁組推進アクションがおこりました。

当時の私は、キッズラインの都事業進出の時同様、本能的な危機感を抱き、警鐘を鳴らしたかったのですが「家庭養護は推進すべきなのに邪魔するな!」という声もあって、「施設から家庭養護への転換」施策を提唱していた私は結果的に看過してしまいました。
結果赤ちゃんが海外にわたってしまいました。深い反省にたって、今後もこの赤ちゃんたちの行方、現状をこれまで同様毎年確認してまいります。

そのとき、私の警鐘を批判した方々も今は「上田さんの危惧は正しかった」と今また力をあわせて家庭養護推進施策をとりくんでいます。

私と同様の危機感をもつ江東区長の存在も心づよく感じております。

東京都江東区長「赤ちゃんポストは難しい問題」 医療法人の設置構想に考え示す 2022年11月17日
「山﨑区長は「赤ちゃんの命を守ることは大切」とした上で、預け入れでは危険が伴う孤立出産が多い点を疑問視。「母親の命はどうなのか。母子の健康はみんなの願いだ」と述べた。
 預け入れられた子どもの処遇を決める区内の児童相談所や、受け入れ先となる乳児院の人手不足にも言及。「この状況で簡単に赤ちゃんがポストに入れられてしまうというのはどうなのか」と、設置については難色を示した。」

児童虐待死で最も多いのは出産直後の死亡であり、生まれたばかりの赤ちゃんを救う所謂“赤ちゃんポスト”は必要なのです。山崎江東区長の指摘もごもっともで、だからこそ、私はまずは都立病院で行うことを長年提唱してきたのです。

安易に、目新しい取り組みを小池知事に持ち込んで、したり顔のお手柄にした数年後、キッズラインやベビーライフのような事件が発生しても、当時もてはやした議員たちは、貝のように口を閉ざし責任も取りません。だからこそ、お姐はイケイケムードの時に、あえて水を差すような指摘をさせて頂くのです。

慈恵病院
▲10年前に視察した際の慈恵病院(お姐撮影)
一昨年逝去された「こうのとりのゆりかご」創設者慈恵病院院長・蓮田太二先生と直接お話ができ、幸運でありました。その薫陶を活かしてまいります。

地方政治家たるもの、目先の注目を浴びたいましてや法人に便宜をはかりたいとばかりに、子どもの命を自己PR・政策実現のツールにしてはならないのです、小池知事も、都議会議員も、区市町村議員も。

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