豚コレラ対策に関する県庁内の議論と分析、知事の葛藤を県民に正直かつ率直に伝えていきたい!:その1

2019年9月16日 午前中、県議会の重鎮で前橋市選出の中沢丈一県議と山本龍前橋市長から連絡があった。明日、前橋JAの組合長と養豚農家の代表が急遽、県庁を訪問したいとのこと。「知事に面会したいので、ぜひ時間を作ってもらえないか?」とのことだった。 すぐに秘書課に連絡を入れ、日程を確認した。庁議の後、午前11時30分までの間なら、何とか時間が作れそうだと分かった。早速、2人に携帯メールを送った。「了解しました。お待ちしています!」 今、群馬県の畜産業にとって、これ以上、重要な問題はない。養豚農家の方々の心情を考えれば、最優先で要望を伺う時間を作らねばならない。当然のことだ。そもそも、明日の早いうちに、(週末の動きも分析しつつ)もう一度、豚コレラ対策に関する幹部協議をやる予定だった。 要望の最大のポイントは、「豚へのワクチン接種」だと思う。この問題は県庁内で何度も議論した。特に畜産の現場に近く、養豚農家の状況を最もよく把握している農政部からは、(当初から)「豚コレラ・ワクチンを接種する許可を早急に国に求めるべきではないか?」という意見が出ていた。 これに対して、「万一、ワクチン接種が行われた後の確たる展望もなく、政府に対して現実には難しいと分かっている要望を出すことが、県として本当に責任ある対応と言えるのか?」という根強い見方もあった。 こうした議論の中で、知事として「今、県が出来得る最大の対策(4億円の豚コレラ対策緊急総合支援)」を決断(専決)したのだ。もちろん、その背景には、群馬県が全国4位の養豚県であり、豚コレラの発生は県経済全体に大きなダメージを与えるという事情もある。 県内の養豚農家のひとたちの不安や焦燥は十分、理解しているつもりだ。仮に群馬県のどこかで豚コレラが見つかったとしたら、手塩にかけて育てた大事な豚を殺処分しなければならない。それが養豚農家にとってどれほど辛いことか?養豚経営にどれほど大きな打撃になるか?想像もつかない。あちこちから「早くワクチンを打たせてくれ!」と悲鳴が上がるのも当然だ。 ましてや「脅威」は着実に忍び寄りつつある。数日前には、隣県(埼玉県)が侵食された。群馬県にとって、豚コレラは正に「今、そこにある危機」なのだ。 そもそも「群馬の豚が日本一美味しい!」と確信している知事の目から見て、「豚肉」は群馬県が内外に発信すべき有力なコンテンツであり、畜産物PR戦略(もっと言うならブランドイメージ戦略)の中核でもある。 もし、豚にワクチンを打つことで、全ての問題が解決するなら、知事として(その状況を整えるために)あらゆる努力を惜しまない。が、(残念ながら)状況はそんなに単純ではない。とても難しい問題なのだ。 なぜ、地域限定のワクチン使用が難しいのか?続編でもう少し詳しく解説したいと思うが、ワクチンを使うことに関し、国は「あくまで最終手段」として、慎重な姿勢を崩していない。最大の理由は、国内でワクチン接種を行うと、国際的なルールによって、日本が「非清浄国」に認定され続きをみる

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