山崎水処理センター(南区忠次二丁目)は、昭和32年(1957年)から建設に着手し、昭和35年(1960年)9月に簡易処理施設の運転を始め、昭和39年(1964年)には活性汚泥法による汚水処理を開始している。現在は1日あたり処理能力は12万立方メートルにまで増強されている。
ただ長年にわたり地域住民は、山崎水処理センターから排出される悪臭に悩まされてきた。家庭や工場などの事業所から出るときは臭いのない下水でも、下水道管を長い時間流れている間に一部腐敗し、悪臭のもととなる硫化水素ガスが発生する。また、水処理センターで沈殿したゴミを処理するときにも腐敗臭が流れ出る。この一部が空気中に出て、くさいにおいのもととなる。
一方、名古屋市上下水道局においても、下水処理施設内の「沈殿池」や「反応タンク」から出る悪臭対策として、悪臭が外に流れ出ないようふたをかぶせたり(覆蓋:ふくがい)、活性炭などによる脱臭設備を設置するなど、環境対策には腐心してきた。しかし、臭いを完全に止めることは困難であること、沈殿池や反応タンク内の清掃時には覆蓋をいったんはずすためため、やはり悪臭が近隣に漂うなど、悪臭対策には限界があった。
そこで名古屋市上下水道局は山崎水処理センターの抜本的な悪臭対策をおこなうため、施設の全面的な改修の実施を決め、令和4年度予算に改築に向けた予算を盛り込んだ。
改築の基本は2点。
〇 二重覆蓋
汚水の水槽に覆蓋をかけ、水槽と覆蓋をさらに建物全体で覆うというもの。また、覆蓋の中の悪臭はすべて脱臭設備で処理する。
〇 高度処理
従来の水処理センターで行っている処理方法では十分取り除くことができない窒素やリンを取り除くための処理方法。高度処理により、山崎川の水質改善を図るとともに赤潮の発生原因である窒素やリンが減少することで伊勢湾における赤潮の発生件数の減少を見込む。
堀留水処理センター(中区)、熱田水処理センター(熱田区)、伝馬町水処理センター(瑞穂区)の廃止に伴い山崎水処理センターに下水処理を集約させる「水処理センター中南部グループの再構築事業」への住民の思いは複雑。今後、下水の集約化とともに山崎水処理センター改築に向けた地域住民に対する説明を行いつつ、住民の理解を求めていくことになる。
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