名古屋城天守閣木造復元があたかも進んでいるかのように市民に偽装していた名古屋市

名古屋市会本会議において、浅井正仁議員(自民:中川区)の質問に対し、「文化庁に出向き、名古屋城現天守閣解体申請書を返却してもらった」ことを認めた名古屋市。しかし、なぜ、現在の天守閣を解体する工事に必要な現状変更許可申請書を文化庁に提出した際には記者発表までしておきながら、解体申請書の取り下げは「こっそり」おこなったのか。ここに「市民に対する偽装」が隠されている。

名古屋城は国の特別史跡のため、現在のコンクリート天守閣を解体したり、天守閣を新しく木造復元したりするなど現状を変更するには、「現状変更許可」という文化庁の許可が必要となる。

しかし、文化庁が現天守の解体にあたり要求していた「現天守閣のレガシーをいかに後世に伝えていくのか」「石垣の保全方針」、そして復元にあたり求めていた「石垣への影響」「木造天守閣の基礎構造・実施設計」などの見通しが立たない中、一向に進まない天守閣木造復元への市民の不満や不信を和らげるために名古屋市が考えたのが、あたかも名古屋城天守閣木造復元が進んでいるかのように市民に偽装すること、つまり、現天守の解体申請と新天守の復元申請をばらばらに申請するという「裏技」だった。

今から3年半前の平成31年4月19日には名古屋市は、現在の天守閣を解体する工事に必要な申請書を文化庁に提出したこと大々的に発表。事業が大きく動いていることを市民にもマスコミにも印象付けることに成功した。しかし、そもそも文化庁は名古屋市に対して「解体と復元を一体的に提出すべき」と要求していたにもかかわらず、名古屋市は文化庁に対し、解体申請のみを無理やり提出。当然、解体申請は審査の対象にならなかった。当時文化庁は、浅井市議に対して「名古屋市には取り下げを求めていきたい。」との意向を伝えている。だからこそ、浅井市議は復元を確実に進めるのであれば、解体申請をいったん取り下げて解体・復元を一体的に申請すべきと本会議場で再三訴えていた。しかし、令和3年6月議会本会議においても、浅井議員の指摘に対し、松雄観光文化交流局長は解体申請を取り下げないことを明言していた。もちろん、解体の取り下げが事業の後退を印象付ける可能性があるからだ。

しかし、ここで文化庁が動いた。

文化庁は全く要請に従わない名古屋市に対して、解体申請を取り下げることを求める「書見」を提出。名古屋市は事業の後退を印象付けることを恐れた結果、「こっそり」と取り下げることになったというのが真相だ。なお、文化庁が自治体に対して「書見」を出したのは過去に例がない。まさに市長が好きな「日本初」の不名誉な事態となってしまった。

多大な税投入をしておきながら、名古屋城天守閣木造復元があたかも進んでいるかのように市民に偽装するためだけに無駄な3年半を費やしてきた名古屋市。一方、偽装に注力するあまり、「現天守閣のレガシーをいかに後世に伝えていくのか」「石垣の保全方針」、「石垣への影響」「木造天守閣の基礎構造・実施設計」などの見通しは全く立っていない。

与えられた宿題を地道にこなさず、市民への偽装に走る名古屋市。いつからこんないい加減な都市になってしまったのか。
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横井利明
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