「どうなる都財政?コロナで多額の財政出動、都債増発の可能性も」
6月30日(火)発行の毎日新聞朝刊の見出し。
しかし、そもそも、東京都において財政難に基づく都債増発なんてできるのか。
答えはノー!!
赤字都債の発行は地方財政法 第五条(地方債の制限)で認められていない。
地方自治体の借金である「市債(東京都の場合には都債)」は、建設市債と赤字市債を区別して考える必要がある。
建設市債は道路や橋、上下水道、小中学校などの建設に使われる借金。これらの公共施設を建設するメリットは将来の世代にも及ぶため、建設市債の償還期間を施設の耐用期間に合わせ、建設費用を世代間で分かち合う方が合理的。つまり、建設市債は世代間の財政負担の公平を図ることができる。
一方、赤字市債は財政赤字を穴埋めするために起債する借金。地方自治体の人件費や生活保護費などの負担金にも使われることになるが、将来の世代にとってはメリットがなく、赤字市債の償還義務だけを負うことになる。だから将来に付けを回すような赤字市債の発行は認められていない。
■ 地方財政法 第五条(地方債の制限)
「地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。」一方、地方債をもってその財源とすることができるものとして、次のように規定されている。
〇 地方債を起こすことができる経費
① 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業に要する経費の財源とする場合
② 出資金及び貸付金の財源とする場合(出資又は貸付けを目的として土地又は物件を買収するために要する経費の財源とする場合を含む。)
③ 地方債の借換えのために要する経費の財源とする場合
④ 災害応急事業費、災害復旧事業費及び災害救助事業費の財源とする場合
災害応急事業:流失橋りょうの応急架設等災害に際し応急に採られる措置
災害復旧事業:河川、港湾、道路等の公共土木施設、農業用施設、林道施設等の農林水産業施設、学校、庁舎等の公共公用施設の(災害救助法に基づく)災害復旧事業
⑤ 学校その他文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設
地方債の起債は上記経費に限られ、新聞の見出しにあるような財源不足による起債は認められていない。たぶん、乱発する国の赤字国債と混同したのだろうが、都知事選挙中でもあり報道は慎重でありたいもの。
なお、赤字市債とされる臨時財政対策債は、国による地方交付税算定の過程で基準財政需要額からの一部振替分として発行が計画されるものであり、臨時財政対策債が地方交付税に準ずる役割を果たせるのは、後年度に元利償還金が交付税の算入対象とされて、実質的に資金補填されるため。