42年前の名古屋市基本構想っていくらなんでも古くない?
42年前の名古屋市基本構想っていくらなんでも古くない?
名古屋市では、まちづくりの基本的な理念や目標、方針などを「名古屋市基本構想」として定め、本市の指導理念として、総合計画の最上位に位置づけている。また、基本構想にもとづき多様化・複雑化する市政の課題に的確に対応し、市民ニーズに応えていくため、長期的展望に立ったまちづくりを明確化する「名古屋市総合計画」を策定するとともに、本計画をふまえ、毎年度の予算を編成している。
さて、「名古屋市基本構想」は、地方自治法に基づき議会の議決を経て昭和52年12月20日に定められた。しかし、地方分権改革の取り組みの中で、国から地方への「義務付け・枠付けの見直し」の一環として、地方自治法の一部を改正する法律(平成23年法律第35号)が平成23年8月1日に施行され、基本構想の策定を義務付けていた規定は、市区町村の自主性の尊重と創意工夫の発揮を期待する観点から現在では廃止されている。
しかし、「基本構想」策定義務付け廃止からすでに8年以上が経過。本市においても、「基本構想」を取りやめるのか、それとも新しい考え方にもとづく何らかの方針や構成・内容の見直しをおこなうのかが問われている。
さて、「名古屋市基本構想」は前文に記された「新しい世紀を展望した基本構想」というフレーズにある通り、21世紀初めの名古屋市を展望し、まちづくりの基本目標と施策の基本的方向を示したもの。しかし、21世紀に入りすでに20年近くが経過した今、いかにも古臭い。
また、平成23年3月に発生した東日本大震災以降、日本各地で発生する地震・気象災害によって防災意識・危機意識が高まっていること、リニア開通を見据えた新たなまちづくりが求められていること、社会問題となった保育所待機児童・児童虐待への対応などの子育て支援施策が重点化していること、情報通信技術の飛躍的な進展等やICT、AIの実現により生活スタイルが多様化していること、スタートアップなど世界をけん引する新たな産業の育成、急増する外国人への対応やインバウンド・マイスへの取り組み、人と人とのつながりも変化し地域コミュニティへの関心が希薄化していることなどにより、行政課題も変化してきている。
さらに、名古屋市においても、近い将来には人口減少・超高齢社会の波が到来する局面が見込まれており、社会経済の支え手である生産年齢人口の減少とともに、高齢者人口は更に増加し、医療・介護等の社会保障費が増加していくことが予想されている。市財政への負担はさらに大きくなることが予想される中、真に効果的な行財政運営を進めていくためには、引き続き健全で強固な行財政基盤の確立に向けた取組を進めるとともに、従来の手法に捉われることなく、優先性を考慮した施策の選択と集中や行政内部の業務改革に取り組み、市民や地域団体とも協力しながら、将来にわたって持続可能な行政サービスを展開していく必要に迫られている。
すでに「名古屋市基本構想」の議決から42年が経過した今、このまま見直しすら行わず放置することは市民から見て行政や議会の怠慢ととられる可能性がある。時代の変化に即応した、そして次の時代を見据えた新しい「基本構想」のあり方について議論する必要があるだろう。
■ 名古屋市基本構想(昭和52年12月20日議決) (←click)