文化庁から要求されている3つの課題

「なぜ名古屋城天守閣木造復元計画がなかなか進まないのか。」といった市民の皆様からのご指摘をいただくことがしばしばある。

すでに名古屋市は文化庁に対して市の考え方を説明しており、一方、文化庁からも天守閣木造復元を進めるにあたってのアドバイスをいただいている。なかなか進まないように見えるのは、このアドバイスへの対応が遅れているからに他ならない。市民の皆様から遅れている理由についてお問い合わせがあった場合は私は以下のように回答している。

名古屋城天守閣木造復元にあたり、文化庁は名古屋市に対し以下の3つの要求事項について考え方を明らかにするようアドバイスしている。

〇 特別史跡の本質的価値を構成する要素である石垣等遺構の保存を前提とした復元整備であること
1. 石垣保存方針
2. 基礎構造の方針

〇 誰もが観覧できる環境整備をすること
3. バリアフリーの方針

■ 石垣保存方針
まず、特別史跡の本質的価値を構成する要素である石垣等遺構の保存を前提とした「石垣保存方針」については、現在進めている保存方針を策定するための石垣調査を取りまとめる必要がある。また、現天守閣解体後、さらに、穴倉石垣を含めた追加調査を実施し、精査・加筆し、とりまとめを行わなければならない。石垣の調査には相当時間を要する可能性がある。

■ 基礎構造の方針
次に「基礎構造の方針」については、竹中工務店が提案した「跳ね出し架構」では、コンクリートで基礎を作る過程で、築城当時の地下遺構を破壊するおそれがあるとして、文化庁や石垣部会から基礎構造として不適ではないかと指摘されているため、同工法に代わる基礎構造の検討を進める必要がある。具体的には地下の遺構や石垣を破壊しないよう、ケーソンの上部空間を利用した新たな「跳ね出し工法」+「鉄骨」による「ハイブリッド基礎構造」などが想定されているが未だ検討は十分進んでいない。

■ バリアフリーの方針
また、「バリアフリーの方針」では、文化財の活用、いわゆる誰もが観覧できる環境整備が求められている。本来ならエレベーターを地下1階から最上階まで設置しバリアフリーを実現することが求められているが、一方で、木造復元天守の重要な梁や柱に影響がでるような昇降設備を設置してしまっては、市民の理解が得られないことも予想される。そのため、昇降設備は各階で乗り換えとなる可能性もあるかもしれない。また、合理的な理由のない限り、より上層階までバリアフリーを実現することが求められており、「1、2階までなら合理的配慮と十分」という合理的根拠のない河村市長の考えでは到底文化庁の理解は得られない。なぜ1、2階で十分なのか合理的な説明が求められるだろう。

本来なら、これら3つの課題をすべてこなしてから建設事業者に発注すべきだったが、石垣等遺構の保存を前提とした石垣の調査をほとんど行わないまま、基礎構造についても全く検討しないまま、バリアフリーの方針についても何ら考えをまとめないまま竹中工務店と契約をしてしまった名古屋市の稚拙な事業の進め方が、ここへきて事業の停滞となってあらわれている。
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横井利明
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