幼児人口の減少の一方で保育園をどんどん増設した結果…
幼児人口の減少の一方で保育園をどんどん増設した結果…
保育園や認定こども園など国の待機児童対策に伴う保育施設の増設により、待機児童問題がほぼ解消する一方で、名古屋市内の保育園でも「定員割れ」が目立ち始めた。少子化の加速やコロナ禍での預け控えで利用児童が減っているためだ。この10年間、ひたすら施設の拡大を続けてきた名古屋市の保育施策は、今や転換期を迎えつつあるといっていい。各保育施設はそれぞれ多額の借り入れを起こして施設整備しているのが実態であり、閉園したくても閉められないのも実態。保育施策を推進する名古屋市子ども青少年局も難しいかじ取りを迫られている。
■ 保育園数(認定こども園を含む:名古屋市)
1996年 270園(公立126園、私立144園)定員31,379人
2000年 269園(公立125園、私立144園)定員30,844人
2004年 273園(公立124園、私立149園)定員31,955人
2008年 281園(公立123園、私立158園)定員32,857人
2012年 286園(公立122園、私立164園)定員33,148人
2016年 397園(公立115園、私立282園)定員42,174人
2020年 459園(公立101園、私立356園)定員47,825人
2022年 527園(公立95園、私立432園)定員50,368人
■ 幼児人口(名古屋市)
1996年 123,776人
2000年 123,657人
2004年 120,573人
2008年 117,823人
2012年 118,232人
2016年 117,083人
2020年 112,758人
2022年 106,927人
幼児人口の急激な減少の一方で保育園、認定こども園を次々に増設した結果が定員割れ保育園の増加。私も関係当局には、保育園数の急増は近い将来、保育園の経営難を助長することになると懸念を表明していたが、いよいよ園児が集まらず経営に苦しむ保育園が出てきたのが実情だ。
その中でも、児童数減少の影響をまともに受けているのが「小規模保育園」。待機児童のうち、そのほとんどが0~2歳児であることから、0~2歳児を対象に小さなスペースでも開園できる保育園として制度化されたのが「小規模保育事業」。一般の保育園のように広い土地や大きな園舎が必要がないことから比較的早く整備ができること、さらに2015年より認可対象となったことで、小規模園は市内で178園(令和4年度)と急増した。しかし、0~2歳だけを対象とした小規模園のニーズは低く、結果として園児が集まらず大きな赤字を出している施設がほとんどであり、閉園したいといった声も広がりつつある。
今後、さらに児童数が減少した場合、賃貸型保育園や既存の保育園などでもさらに定員割れが広がることが懸念されており、また、市内幼稚園においても新規入園者が集まらない園が増加していることから、今後、幼児教育施設、児童福祉施設の閉園、廃止を含めた検討が各法人で始まることになりそうだ。保育園をひたすら拡大してきた市の対応に注目が集まる。