市内の保育園で園内感染の発生が明らかになった4月12日、保育関係者の中に悲鳴にも似た衝撃が走った。「保育園の開園を継続する」といった決断を名古屋市がした時点から、「他都市のように、いつかは園内感染が発生するかもしれない」と、誰もが覚悟はしていたもが、保育士から乳児への感染という事実を目の当たりにすると、胸が締め付けられるような思いがした。
保育園や認定こども園等の役割は、日中保護者に代わって心身ともに健やかに成長するように保育するところにあり、また、それぞれの家庭の状況を踏まえ、的確な保護者支援もおこなうことが期待されている。そして、保育者は、子どもたち、一人ひとりが保育園生活を伸び伸びと楽しめるよう、常に愛情と奉仕の精神に徹し、知識と技術の修得に努め、自己研鑽しながら自らの人格と教養を高め、子どもたちの最善の幸せを目指している。
その原点は、保育者の子どもに対する限りない愛情だ。子どもたちにいかに愛情を伝え、子どもたちも愛情をいっぱいに感じながら健やかな成長を遂げる。したがって保育という仕事の特性は、子どもたちを抱っこしたり、おんぶしたり、あやしたりというスキンシップが基本となる。また、おむつを替えたりミルクを飲ませたり、寝かしつけたり、沐浴したりと子どもの隣には常に保育士が寄り添う。逆に申し上げれば、新型コロナウイルス感染症による感染が心配だから、保育者と子どもの接触がだめだというのならすでに保育は成り立たない。
それだけに、今回、園内感染が発生した保育園や保育士さんの心情を思いやると、本当にいたたまれない気持ちになる。
今、すべての保育園では、毎日、保育室内や子どもの遊具、トイレや子どもの持ち物にいたるまで、ありとあらゆる箇所をアルコール消毒したり、保護者の方々にも健康観察や園内に入るときにはアルコール消毒をお願いするなど、感染対策には神経をすり減らしながら取り組んでいる。しかし、このような保育士から子どもたちへの感染は、保育という仕事の特性上、避けることは不可能だといっていい。
今一度立ち止まり、保育園を開所するのかどうか、また、開所するならどのような条件なのか、そして保育園が新型コロナウイルス感染症の前では絶対的に安全ではないということをどのように保護者の方々に知らせるべきなのか、行政、保護者、保育者、そして疫学の専門家などオープンな場で議論し、共通理解のもとに保育施策を展開する必要がありそうだ。