「(名古屋城天守閣木造復元)建て替え計画はこれでめどが立たなくなった。私が間に入って調整してくれと、間をとってくれということであればですね、間に入って調整することはやぶさかではありません。」6月24日午前、大村知事の定例記者会見での発言だ。
木造復元どころか現天守閣の解体の見通しすら立たなくなっている名古屋城天守閣木造復元事業に対し、大村秀章愛知県知事が解決に向けて乗り出す意向を示した。大村知事に発言の真意を直接うかがうと、「ごたごたした状態が長く続き、知事としても心配している。文化庁や障がい者団体、石垣の専門家等との調整を知事自身でおこなうなど解決を図る用意がある。」とのことだった。
この知事の申し出に、ひとことで申し上げれば「情けない」。
名古屋城天守閣木造復元事業が本市の事業であるにもかかわらず、他団体の首長から、市の調整機能不足を指摘され助け船を出されるなど、いかに本市が機能不全に陥っているかを天下に知らしめした形。再三、文化庁や石垣部会から本市の文化財保全に対する姿勢について何度も指摘され、また私からも石垣の保存について対応を進めるなど申し入れを継続して行っていたさなかのとであり、今回の知事の申し出は河村市長や担当職員にもかなりの衝撃を与えた。
ただ、知事が乗り出したとしても、この問題がすぐに片付くわけではない。文化庁や石垣部会は、石垣の保全計画にまず取り掛かるように指摘しており、文化財の保護という地道な手順を踏まない限り、名古屋城天守閣木造復元事業は一歩も進まない状況は変わらないものと考えられる。
むしろ知事は、「当初から文化庁の許可を得るのは難しいと聞いていた。河村市長の政治責任は当然出てくる」と述べるなど、市財政に多大な損害を与えかねない事態に懸念を表明したものとも考えられ、河村市長の進退問題にも発展する可能性が出てきた。