観光文化交流局の文化財保護に対する姿勢を質した浅井正仁議員(中川区:自民)の質問は、文化財に対する市の姿勢を浮き彫りにした。
文化財保護法
第三十三条 重要文化財の全部又は一部が滅失し、若しくはき損し、又はこれを亡失し、若しくは盗み取られたときは、所有者(管理責任者又は管理団体がある場合は、その者)は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、その事実を知った日から十日以内に文化庁長官に届け出なければならない。
■ き損事故の経緯
10月9日 石垣そのものが劣化により崩れる「き損」が発生
10月14日 調査時にモルタルが落下した「き損事故」が発生
11月3日 浅井議員に「名古屋市がき損事故を隠ぺいしている」と内部通報
11月10日 「き損届」作成
11月16日 「き損届顛末書」作成
11月16日 教育長に「き損事故」報告
11月16日 文化庁に電話で一報
11月17日 「き損届」を文化庁に郵送
11月19日 「き損」を市長に報告
11月19日 浅井議員が「き損」を広沢副市長に情報提供
※ 法定期間の10日を過ぎて「き損届」を提出する場合は「顛末書」を添付して文化庁に提出する必要がある。
本年3月2日、名古屋城重要文化財等展示収蔵施設の外構工事を実施していた際に、六番御蔵の東側の縁にあたる位置にあった石列をき損するという全国的に見ても前代未聞の文化財き損事故が発生したばかり。再発防止策を策定したにもかかわらず、今回は浅井議員が指摘するまで、文化庁に対し、き損届の提出がなされないという事態を招いた。
隠ぺいと取られても仕方のない事態となった背景について浅井議員は、「調査機材が石垣に当たった程度で石垣モルタルがき損したり、大雨で石垣がき損するほど、石垣が危険な状態であることが明らかになれば、今後予定される現天守閣の解体に伴う振動等で、石垣が崩落を含めた影響が出る可能性が否定できない。そのため、大量に充填されたモルタルの調査の必要性や石垣の保全の際のモルタルの取り扱い、石垣の劣化の程度が文化庁や石垣部会で話題となる可能性がある。そのため、市は石垣保全のための調査の必要から今後のスケジュールにも大きく影響することを避けようとしたのでは。」と推測。
いずれにしても、市長から直ちに天守閣の木造復元を進めるよう求められている観光文化交流局としては、必要な調査に時間をかけることが困難なため、届出を躊躇する事態を招いた可能性がある。市は隠ぺいではないとするが、無理なスケジュールが招いた今回の事態とも言える。