陽子線訴訟 市の支払い1億5,000万円をけり3億8,500万円で和解…?
陽子線訴訟 市の支払い1億5,000万円をけり3億8,500万円で和解…?
平成21年9月18日、河村市長が「名古屋陽子線治療センター(北区)」の建設中止を申し入れ、整備事業が一時凍結されたことに伴い増加費用が生じたとして、施工業者の日立製作所が平成28年4月25日、約3億8200円の支払いを求めて市を提訴していた。これまで5年弱にわたって審理がなされてきたが、裁判所の勧告により、訴訟上の和解が成立することになった。
■ 和解案の骨子(令和3年2月4日合意)
・本市は日立に対し、和解金として3億8,500万円を支払う。
・工事の遅れにより管理業務の開始が遅れた機関の対価は発生しない。
・日立が行う管理業務を行う期間を8か月延長し、その対価として市は日立に4億4,300万円支払う。
しかし、私たち議会は、なぜ市長がこんな和解案に合意したのか理解に苦しんでいる。
実は本訴訟に先立ち、日立製作所は平成25年3月、名古屋市に4億8,600万円の支払いを求め、横浜弁護士会紛争解決センターにおける「裁判外紛争解決手続(ADR)」を申し立てていた。斡旋人より提案された和解案では、当初請求額の3分の1となる1億5,300万円を市が日立に支払うよう提示されたが、河村市長は期日までに和解に応じず決裂している。
当時、ADRを担当していた岩城正光元副市長は、1億5,300万円の和解案は破格の額だとして、河村市長に受け入れを強く促した。しかし、岩城元副市長によると河村市長は「選挙に不利になる」として決断せず、やむを得ず日立は、平成28年4月、名古屋地裁に市を提訴した経緯がある。なお、河村市長はADRの受け入れを求めた岩城元副市長を任期半ばで解任している。
つまり、1億5,300万円の支払いは高いとして断り、3億8,500万円を支払うことで合意した理由が全くもって不明だ。この時点で市民は2億3,000万円損している。
なお、ADRにおいて斡旋人から示された1億5,300万円の和解案を蹴った理由について河村市長は当時、以下のように説明している。
■ 1億5,300万円の和解案に合意しなかった理由
① 現段階では現段階では、この和解案では市民の理解を得られない。
② 3か月半の間、一時凍結したことに対する金額の妥当性に疑問がある。の2点
1億5,300万円では市民の理解が得られないが、3億8,500万円なら市民が理解する理由を市長は市民に説明する必要がある。なお、仮に和解が成立し、名古屋市が3億8,500万円支払うことになった場合、市民から河村市長に個人求償を求める訴訟が提起される可能性をはらんでいる。
■ 経緯
平成21年9月18日 名古屋陽子線治療センター建設工事を河村市長が一時凍結
平成22年1月4日 河村市長は一時凍結を解除
平成25年3月 日立が裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立て
平成28年3月24日 河村市長が和解案を受け入れず決裂。ADRは打ち切りに。
平成28年4月25日 日立が名古屋市を名古屋地方裁判所に提訴
平成30年10月11日 河村市長の指示により本市が日立を名古屋地方裁判所に提訴
令和3年2月4日 議会の承認を受けたのち、和解を成立させることに合意