伊勢湾台風直後の昭和35年1月、アメリカの女優シャーリーマクレーンさんが伊勢湾台風で被害にあった小中学校に送ったとされる「愛のピアノ」47台のうちの1台が、みなみほいくえん(南区)の1階ぷれいるーむに残っている。「愛のピアノ」は保育士によって演奏され、子どもたちはピアノの音色に合わせ、毎日のように歌ったり踊ったりしながら、保育園での生活を楽しんでいる。
さて、「愛のピアノ」は、日本での滞在経験のあるマクレーンさんの夫、スチーブ・パーカーさんから伊勢湾台風の大被害を知らされたマクレーンさんが、仲間の俳優に呼び掛けて慈善興行を行い、寄せられた約2万ドル(現在の価値で1億8,500万円)で被災した東海3県の小中学校に日本の福祉財団を通してピアノを贈ったもの。
みなみほいくえんに残されたピアノは、もともと同じ学区にある明治小学校に、今から60年前に寄贈されたもの。「愛のピアノ」を探していたヨコイによって4年前、発見された。校舎4階倉庫の片隅に保管され廃棄待ちだったピアノは、音の出ない鍵盤、音の高さが大きく外れてしまった鍵盤などがあり、使用不可能な状態だったが、ヨコイは当時の校長先生に、みなみほいくえんへの貸し出しを要請。小学校の許可を得てみなみほいくえんに搬送し、専門業者によって、2度にわたって修理・調律をおこなった。
みなみほいくえんの保育士は「愛のピアノ」の由来を子どもたちに伝えている。そして、子どもながらに、「愛のピアノ」を通して、助け合いの大切さや感謝の気持ちとともに、伊勢湾台風について理解しようとしている。
60年の時をこえ、今でも愛と感謝の音色を奏でる「愛のピアノ」。きっと子どもたちが伊勢湾台風の教訓を伝えていってくれるに違いない。