ガソリンやパン、牛肉や食用油など、生活必需品の値上げが相次ぎ、家計の負担感が増している。とりわけ国民年金(老齢基礎年金)のみで生活をされている高齢者の皆様からは悲鳴が上がっている。
■ 国民年金(老齢基礎年金/満額)
令和3年度(月額) 65,075円
令和2年度(月額) 65,141円
令和3年4月分からの年金額は、法律の規定により令和2年度から原則0.1%の引き下げとなっている。さらに、国民年金額から介護保険料・後期高齢者医療保険料等も天引き。自営業などを営んでいた老齢基礎年金のみの受給者はかなり厳しい生活を強いられる。
さて、本来、公的年金額は物価等が上昇すると、その分だけ受給額も増える仕組みとなっている。
しかし...
■ マクロ経済スライド
公的年金制度は、現役世代が納めた保険料がその時の受給者の給付に充てられる、いわゆる賦課(ふか)方式の仕組みを取っている。その給付額は賃金や物価の変動などを基準として改定することが法律で定められている。物価が上がれば法律に基づき年金額も増える。
しかし、保険料を負担する現役世代の人口の減少や年金給付を受ける高齢者の平均余命の伸びによる年金財政の悪化を避けるために、2004年に給付水準を自動的に調整する「マクロ経済スライド」が導入された。給付水準の調整に当たっては、人口の増減や年齢構成の変化の根拠となる国勢調査(総務省統計局)や人口の将来推計、物価水準を示す消費者物価指数(総務省統計局)などの統計データが用いられている。
この収入の範囲内で給付を行うため、「社会全体の公的年金制度を支える力(現役世代の人数)の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、給付水準を自動的に調整する仕組みが「マクロ経済スライド」と呼ばれている。
物価の上昇があっても、上昇分だけ年金額が増えることはなく、さらに年金受給者の生活は厳しくなる。急激な物価の上昇があった場合には、老齢基礎年金のみの受給者にいかに寄り添うのかといった姿勢が国や地方自治体に求められそうだ。