相手に同意を得ることなく会話を録音する「秘密録音」に対して、東京高裁昭和52年7月15日判決では「話者の同意なくしてなされた録音テープは、通常話者の一般的人格権の侵害となり得ることは明らか」と見解を述べている。
一方で、平成11年最高裁判例では、相手の同意を得ることなくおこなった「秘密録音」の証拠能力に関して、「たとえそれが相手方の同意を得ないで行われたものであっても違法ではなく、その録音テープの証拠能力は否定されない」とされている。「秘密録音」を証拠として認めた判決だ。
しかし、日常的な会話や酒席においてまで、会話の録音が無制限におこなわれる社会が本当に許容されるのか。かつてNHK「クローズアップ現代」においても、「秘密録音」が横行した会社において、社内コミュニケーションがほとんどなくなったという事例が報道されたことがあったが、スマホアプリによって録音が簡単にできる時代だけに、プライバシーの侵害や個人情報保護の観点から、今一度「秘密録音」を取り巻くルールについて議論が必要だと思う。
議会内でも、議員間の懇親など自粛したいとの声が出始めている。民主主義の原点は議論。公式の場、非公式の場を通して議論を尽くし、望ましい結論を導き出さなければならない議会においても、「秘密録音」の影響は決して小さくはない。