令和2年6月5日、建築物等の解体等工事におけるアスベスト(石綿)の排出等の抑制を図るため、「大気汚染防止法の一部を改正する法律」(令和2年法律第39号)が公布された。公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。
施行されると、がんや中皮腫などの悪性疾患をはじめとした健康被害を引き起こすアスベストの解体や改修等の現場における飛散防止対策が強化される。
さて、アスベストはその発じん性によって分類される。発じん性とは、粉じんの発生のしやすさを指しており、飛散性と同様の意味。アスベストは建材に様々な形で含まれますが、利用されている形状や密度によって、解体工事の際に飛散するリスクも異なる。飛散リスクが高いものほど、近隣への影響を及ぼしやすいため、危険性が高いとされている。
■ アスベストレベル
レベル1:石綿含有吹き付け材など発じん性が著しく高い。アスベストの濃度が非常に高く、撤去する際に大量に粉末が周囲に飛散する。
レベル2:石綿含有保温材や耐火被覆材、断熱材として使用されており発じん性が高い。レベル1に比べると飛散性は下がるが、高い注意が必要。
レベル3:レベル1やレベル2に該当しない、建築物の屋根材や外壁材、建築物の天井・壁・床などに内装材として使われる石綿含有成形板、ビニール床タイルなど。発じん性が比較的低いものの、除去作業時などでの扱いが不適切な場合、飛散の可能性が指摘されている。
今回の法改正では、従来、規制対象となっていないレベル3のアスベストを含有する建築資材等の不適切な除去によりアスベストが飛散する事例が少なくないため、すべての含有材に規制対象を拡大。また、一定規模以上等の建築物等の解体等工事について、石綿含有建材の有無にかかわらず、調査結果の都道府県等への報告を義務づけるとともに、隔離等をせずに吹付け石綿等の除去作業を行った者に対する直接罰を創設する。
本市建物物においても、1955年頃から1986年までレベル3にあたる内装材(天井、壁、床材)、外装材、屋根材、煙突材などを建築資材として大量に使用しており、「大気汚染防止法の一部を改正する法律」の改正で該当する施設が数多く存在すると考えられる。今後、本市所有建築物の実態調査の必要とともに、建物解体時において、また大規修繕にあわせ、法改正の趣旨に従った対応が求められる。