「桜神明社古墳(名古屋市南区呼続四)が名鉄名古屋本線立体交差化事業の仮線用地の区域に入っており、このまま名鉄の高架事業が進んでしまうと、先人が一千数百年間にわたり守ってきた大切な財産が破壊されてしまう。ぜひ、市民共通の財産を横井さん、守ってほしい。」
こんなご相談を桜神明社古墳を管理する桜神明社氏子総代長である髙橋隆二さんからいただいたのが3年半前。早速、桜神明社に出向き、氏子の皆様から直接ご意見やご要望をいただいた。
古墳好きの横井利明にとっても、これは一大事。早速、名鉄名古屋本線連続立体交差化事業を計画段階で所管する名古屋市住宅都市局の考え方を質した。
後日、住宅都市局から回答があり「名鉄名古屋本線に接して位置する桜神明社古墳は、確かに仮線用地内にある。名古屋市が買収したのちに、仮線用地として利用し、その後は道路として整備する予定です。」とのことだった。
南区には
・名古屋唯一の一里塚である「笠寺一里塚」
・鳥栖八剱社古墳、鳥栖神明社古墳、桜神明社古墳などが当時のまま残されている。
・見晴台遺跡(南区)からおおよそ2万年前に作られたと考えられている角錐状石器(かくすいじょうせっき)が出土しており、名古屋市内で最も古くから人々が居住したのは笠寺台地といわれている。
・名古屋最大の遺跡群「見晴台遺跡」
・10か所をこえる城跡
・貝塚群
歴史や文化遺産の宝庫である南区の大切な文化遺産を失う可能性がある開発手法などとんでもない話。
そこで、桜神明社の氏子の皆さんや地元である呼続学区協議会と相談し、関係者とともに、以下の2点を市に訴えることとした。
■ 市への要望
1. 桜神明社古墳を名古屋市文化財に指定し未来永劫、保存すること。
2. 名鉄名古屋本線連続立体交差化事業の仮線計画を変更し、古墳を解体することなく仮線を設けるよう計画を見直すこと。
令和4年9月9日の市文化財指定により、住民の要望通り、桜神明社古墳は未来永劫、保存されることになった。率直にうれしい。なお、名鉄名古屋本線連続立体交差化事業の仮線計画についても、名古屋市住宅都市局はすでに見直しを表明。仮線を立体化することで、古墳を守りつつ立体交差化事業を進めることが内定している。
■ 桜神明社古墳(名古屋市指定遺跡)
1. 文化財名称 桜神明社古墳
2. 文化財種別 史跡
3. 所在地 名古屋市南区呼続四丁目2718 番、2719 番
4. 所有者 神明社
5. 現状 墳形:円墳(2段築成)墳丘直径:約42m 墳丘高:4.8~5.8m
6. 築造時期 5世紀前半
7. 指定理由
5世紀前半の築造と推定される古墳で、円丘状の高まりが良好に残存している。名古屋市南区の笠寺台地に立地する大型の円墳で、笠寺台地上の首長墓に位置づけられる。
出土した埴輪は、近畿地方のものとの類似性が高く、古墳被葬者と近畿地方との関係がうかがえる。4世紀後半の兜山古墳(東海市指定史跡)に始まり、6世紀前半の断夫山古墳(国指定史跡)、白鳥古墳に至る、あゆち潟沿いに営まれた首長墓の展開をたどるうえで、重要な位置づけを示す古墳である。