感染症の危機管理:新型インフルエンザ対応の教訓(5)「結果シロでも迅速対応がよい」

 2009年4月29日にはアメリカでも初の死者が出た。そして、30日には、WHOは新型インフルエンザの警戒レベルをフェーズ5に引き上げた。そこで、朝7時に記者会見し、このことを直接国民に伝え、「国民の生命と健康を必ず守る、長期戦になると思う」と述べ、「早期発見と早期治療で治るので、正しい情報に基づいて冷静に行動してほしい」と呼びかけた。 ジュネーブと東京では時差があるので、WHOの動きは夜を徹して注視しておかねばならない。担当職員も私も、この頃から深夜就寝・早朝起床で、日に2〜3時間しか眠れない厳しいスケジュールをこなさねばならなかった。 そして、翌5月1日の未明、1時35分。また緊急記者会見をする羽目になった。国内初の感染疑い例が出たからである。4月25日にカナダから帰国した横浜市の高校生である。 簡易検査でインフルエンザA型陽性という結果が出たという報告が横浜市から届いた。夜の10時頃である。より詳しいウイルス遺伝子検査(PCR法)の解析結果を待ちながら、新型インフルエンザ陽性であった場合、すぐに危機管理の体制に入らなければならない。翌日の学校閉鎖をするかなど、直ちに指示を出さねばならない。もちろん国民に正確な情報を伝えなければならない。新型インフルエンザの毒性が不明であるし、メキシコなどで多数の死者が出ているので、国民がパニックに陥る危険性がある。 PCR検査の結果を一刻も早続きをみる

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