インフル法改正、緊急事態宣言について。この問題は、総理大臣が宣言すれば緊急事態になりえる、憲法における緊急事態とは少し分けて考える必要がある。 まず 「法律における緊急事態宣言」 「憲法における緊急事態条項」 2つの違いをシェアしたい。 法律における緊急事態宣言が発令された場合、緊急時における一定の私権の制限はあるが、できる制限の内容はあらかじめそれぞれの法律に書いてある。追加で制限する場合にはさらに法律を改正しなければならない。 その法改正のたびに、国会で法案審議が行われる。その都度、国会が関与することで、政府がやっていることを監視できる。 一方で、憲法における「緊急事態条項」(自民党2012年改憲草案)は大きく違う。憲法改正され、緊急事態条項が追加され、その後、何らかの大災害や安全保障上の緊迫など緊急事態が発生したと内閣が認めれば、内閣は、法律に基づかない人権を制限する内容の政令を制定できる。そして、それが法律と 同等の効力が及ぶ。私たちの人権の制限が、緊急時対応を 理由にどんどん追加できる恐れがある。 そのとき、国会が関与できる余地がなくなってしまう。議会制民主主義の死ともいえる。 以上が、法律における緊急事態宣言と、憲法に規定された緊急事態条項における効果のザックリした違い。要するに、法律に規定のある緊急事態宣言では、内閣がやることには国会審議を通じてチェックを一応できる状態になっている。しかし、憲法の緊急事態条項がはいり、それに基づく緊急事態宣言が発令されると、それができなくなる。 その上で聞いてほしい。すでに「緊急事態宣言」が入る法律は以下、4本である。 警察法(昭和29年成立)災害対策基本法(昭和36年成立)原子力災害対策特措法(平成11年成立)新型インフルエンザ特措法(平成24年成立) これら法律の運用規定に、「国会の承認を義務づけているかどうか」で整理すると以下の通りになる。 警察法=国会承認が必要災害対策基本法=国会承認が必要 原子力災害対策特措法 =国会承認が不要(国会「報告」規程はない)新型インフルエンザ特措法=国会承認が不要(国会「報告」規程あり) 国会承認規定があるのが、警察法・災害対策基本法の2法。それ以外にはない、という部分に不信感を持つ人もいるだろう。 ただ、国会承認規定がある二法では「20日以内の事後承認」であり「事前承認」ではない。 しかも、万が一、閉会中に宣言が出された場合は、次に開会される国会において承認議決(事後承認)をすればいい程度のスピード感。 国会承認が不要、という原子力災害対策特別措置法では、緊急事態宣言時において、そもそも線量という数値を前提に原子力規制委員会が宣言を出すように促すので、政府としては判断の余地がないため、国会に対する報告規定もない。 原子力緊急事態における行政の権限としては「避難指示」ができる。 一方、インフル特措法では「指示」よりも強さで言続きをみる『著作権保護のため、記事の一部のみ表示されております。』