石破 茂 です。
今回の新型コロナウイルスによる症状の特徴は「比較的軽く、感染しても自覚症状のない人もおり、致死率が低い」ことにあります(もちろん重篤になる方も亡くなる方もおられますが)。それらは今までの常識からすれば「良いこと」なのですが、米国ジョンズホプキンス大学の2018年の研究論文は、今後の新型ウイルスについて「自覚症状がないため、感染していることに気付かないまま街中を歩き、ウイルスを拡散させ」「宿主である感染者が死亡すればその体内でウイルスも生存できないが、死亡しなければ生き続ける」ことになり「公衆衛生上の危機ではなく、全世界の社会経済的な危機に直結しうる」ものと論じていたそうです。この内容について確認するような知見は持っておりませんが、これが本当に2018年に書かれたものだとすれば、驚く他はありません。株価の大幅下落も加わって世の中は既に危機管理モードに入っており、感染拡大と経済の失速を阻止するために、リスクと批判を覚悟のうえであらゆる施策を総動員しなくてはなりません。事業者に対する信用保証協会の保証付き融資も、金融機関の融資手続きを簡素化するとともに保証協会の原資を潤沢に確保しなくてはなりませんし、パートや派遣などの未組織労働者の方々や、フリーランスなど個人事業主の方々への給付も迅速になされるべきです。三月は期末月であり、ことは急を要します。
政府として当面考えられる対策は用意したところですが、これらについて国民の立場に立って徹底した広報・宣伝をしなくてはなりません。飲食店の多くは今や閑古鳥が鳴いていますが、そこで働く人(法的には「個人事業主」であることもある)が「明日からしばらく来なくていい」と言われた場合、一体どうすればよいのでしょうか?答えとしては、最寄りの都道府県労働局へ行き、「雇用調整助成金を受け取りたい」と言えば良いですよ、ということなのですが、それは何処にあり、どのような書類が必要で、手続きはどうなるのか。「明日からしばらく来なくていい」という際に、雇用主のほうから「こういう手当てがありますよ」と言えるような手立てまできちんと講じておかなくてはなりません。
本来、このような作業は行政があまり得意な作業ではない中で、確実に実行されるように促すのは我々議員の仕事です。政策が国民一人一人の心に響くよう、「何処で誰が何に困っているのか」を想像力の限りを働かせて把握しなくては政府に対する信頼は生まれませんし、信頼なくして危機管理は機能しません。防災省の創設については全く議論が進んでいませんが、CDC(米国疫病管理予防センター)についても同様です。知見をお持ちの方の御教示をお願いいたします。かねてより今の日本は「株主優先金融資本主義」とでも称すべき状態になりつつあるのではないかと思っております。株価が高いこと自体は歓迎すべきことではありますが、日本国民の株式保有率は9%であり、裨益する人はそう多くはありませんし、本来の「投資」ではなく「投機」の傾向が強くなり実体経済との乖離が大きくなれば、これはあるべき方向性についての詰めた議論と明確化が必要です。
法相の発言の混乱ぶりはかなり理解困難ですが、政府には東京高検検事長の定年延長について、その理由とそれに至った経緯を納得できるように説明する責任があります。法相は元々誠意ある明晰な方だと思いますので、今後の精励を期待します。
この週末も各地での講演・会合はそのほとんどが延期となりました。規模を縮小し、ウイルスへの対策を講じた上で、いくつかの会合や催しが開催されますため、久々に地元へ帰ります。
14日土曜日は第3セクター若桜鉄道八東駅行き違い施設完成竣工式(午前10時・八東駅・八頭町下野)、若桜鉄道関係者との意見交換・懇談会(午前11時・オオエバレーステイ・ダイニングレストラン)、若桜鉄道若桜駅リニューアル見学(午後0時55分)、自民党若桜町支部と語る会(午後1時・ダイニングカフェ「新(あらた)」)、自民党鳥取市津ノ井支部総会・国政報告会・懇談会(午後4時・ますこ食堂・鳥取市津ノ井)、という日程です。
今週末、移動の時間などを利用して「世界は宗教で動いている」(橋爪大三郎著・光文社新書・2013)、「日本列島回復論」(井上岳一著・新潮選書・2019)を読了したいと思っています。米国大統領選挙も今秋に控えており、日本人には理解しにくい「宗教と政治」について少しでも学んでおかなくてはならないと思っているところです。
過度に恐れず、適切に行動する。言葉にするのは簡単ですが、難しいですね。
皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。