映画「コンテイジョン」(スティーブン・ソダーバーグ監督:2011年)と、新型コロナウイルス感染症による感染拡大が進行する現在の状況が恐ろしいほど酷似しているとの友人の声をいただき、早速自宅で「コンテイジョン」を鑑賞した。香港で発生したコウモリとブタの遺伝子に起因するウイルスが世界を襲い、数千万人もの人命が奪われるというストーリー。
すでに2011年に、コウモリに起因するウイルスによるパンデミックで社会が混乱するといった「予言」がなされていたのなら、なぜ世界はそして日本はもっと準備ができなかったのか、また、ソダーバーグ監督によれば、科学者たちはそろって、こうした事態が起きるのは時間の問題だと言っていたとのことだが、なぜもっと科学者の声に耳を傾けることができなかったのかと残念でならないし、新型コロナウイルス感染症の初期段階で国家による隠ぺいがなければとも感じさせた。
そして、ウイルスの感染拡大に負けないスピードで拡散し社会を混乱させるのが「恐怖心」。「デマ」「マスコミ」「インターネット」によって人々を社会不安に陥れるとのコメントもなされたが、これら誤った情報が流れる原因となるのは、情報をしっかり提供しない国や地方自治体の姿勢であることは言うまでもない。国民が知りたい情報を適切に迅速に正確に提供することこそが社会不安を起こさない重要な視点であることはこの映画の最も伝えたい点だろう。感染者名簿の公表は論外だが...
「コンテイジョン」ではワクチンの開発によって感染拡大は収束を迎える。しかしワクチンの開発には多大な時間を要することから、感染拡大の本質は、市民一人ひとりの衛生に関する正しい知識と関心であること、ソーシャルディスタンスを心掛け、手をしっかり洗い、新型コロナウイルス感染症への罹患が疑われたら自宅から出歩かないことも示唆している。
映画「コンテイジョン」は現実よりもいささか楽観的ではないかとも感じたが、感染症対策を進める上で、一度鑑賞してみるのもいいかもしれない。