陸自ヘリ墜落事故とJアラートなど

 石破 茂 です。
 陸上自衛隊のヘリコプター墜落事故で、搭乗者の発見が第一であるのは当然のこととして、事故原因の究明のためにはいわゆる「ブラックボックス」の回収が急がれるはずです。「ブラックボックス」はボイスレコーダー(CVR)とフライトレコーダー(FDR)を総称したもので、航空法の適用を受けない自衛隊機にも搭載されており、数千Gの強い衝撃にも、1100度の高熱にも、6000メートルの水圧にも耐え、30日間以上その位置を知らせるビーコン(超音波信号)を発信し続ける性能を有すると言われています。今に至るもこれが発見されていないとのことで、確かに現地は水深が約100メートル、潮の流れも速いのですが、回収不可能なほどのものではないでしょう。ビーコンが発信されていないとすれば、故障や電池切れが原因なのかもしれませんが、離陸前に行うはずの機器の点検にはCVRやFDRは入っていないのでしょうか。
 航空機が海に墜落した時、最近のCVRやFDRは機体と分離されて水面に浮かび、信号を発信するものと聞いていましたので、今回何故それが発見されないのか不思議に思っておりましたが、報道によれば陸上自衛隊のヘリコプターに搭載されているFDRは海上自衛隊や航空自衛隊のそれとは異なり、衝撃時に自動的に機体と分離され海上に浮いて位置を知らせる機能は付いておらず、むしろ分離されないように機内に内蔵されているとのことです。陸自機は通常、海上を飛ばないので、そのような機能を必要としない、ということのようですが、これも今後検証が必要でしょう。

 

 昨14日、北朝鮮から発射されたミサイルが北海道に弾着するとのJアラートが発出され、その後、弾着の可能性がないとして「訂正」されましたが、これも一体どういうことだったのでしょうか。「最悪の事態を想定して、見逃し三振よりも空振り三振をすべきだと考えた」というのは一見もっともなように聞こえますが、要は防衛省のミサイル探知・迎撃システムと、Jアラートを発出する消防庁のシステムとの連接が適切ではない、ということなのではないでしょうか。
 もし北海道に落下する可能性があったのなら、ミサイル防衛任務イージス艦や、北海道所在の空自パトリオット部隊が迎撃態勢に入っていたはずですが、果たしてそのようになっていたのでしょうか。国民には避難を呼びかけながら、自衛隊は対応していなかったというのなら、これは一体何なのでしょう。いずれにせよ、このようなことが続けば、ミサイル防衛システムそのものに対する国民の信頼が大きく揺らぎます。
 判断を誤ったりミスを犯したりしたとき、美しい言葉や精神論でこれを糊塗してしまえば、また同様の誤りが続き、最終的には安全保障態勢そのものがいい加減になります。防衛予算を増やしておカネを積むだけで安全が確保されるわけではありません。

 

 12日水曜日の衆議院憲法審査会では、自民党や維新の多くの委員から「憲法第9条第1項と第2項はそのままに、第3項に自衛隊の存在を明記すべき」「専守防衛も平和主義も全く変わらない」との論が多く聞かれましたが、本当にそれでよいと考えているのか、空恐ろしい思いすら抱きました。「必要最小限度」に拘泥せず、「自衛権」を国際法と同じ水準に捉えなおさない限り、自衛隊が我が国の独立と平和を守るために行う任務には不合理な制限が伴い続けますし、「専守防衛」論には軍事的合理性はほとんど見出せません。「かつてない危機」を強調しているのにもかかわらず、このような議論がいまだに続けられることに対する違和感は、一層強くなるばかりです。

 

 鳥取県知事・県議会議員選挙も終わり、知事選は平井伸治現知事が9割以上の得票率で5選を果たし、県議選は定数35の内、自民党が公認と推薦を合わせて19議席を確保して1議席増となりました。鳥取市選挙区では知事と同姓同名の候補が最下位ながらも当選し、市長や参議院議員を務めた無所属新人候補が落選するという意外な結果となりました。直前になって立候補を表明した知事と同姓同名の候補は、無投票阻止を目的として立候補したのだそうで、選挙公報に「立候補の目的は果たされたので、どうか私に投票しないで他の候補に投票して欲しい」と記載し、SNS発信以外の選挙運動はほとんど行わない、という誠にユニークな選挙戦を展開したのですが、この候補が3613票を獲得した結果をよく分析してみる必要があります。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というのはどの選挙にも共通する真理です。

 

 週末日曜日は、鳥取市で農業についての講演を行う予定ですが、農政に限定した講演は本当に久しぶりで、よく頭を整理して臨まねばなりません。
 皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

 

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