「富士山会合」など

 石破 茂 です。
 いつものことで今更驚きもしませんが、先週木曜日に水月会の会長退任を表明させて頂いて以来、報道は政策集団や所属議員の今後を巡るものばかりで、自民党の在り方や、政策についての議論は何処にも無く、嘆息・辟易するばかりです。
 「水月会のような、政策に重きを置くグループの存在は、自民党にとって必要なものであり、この結束を今後とも維持すると共に、残り一年を切った次期衆議院総選挙や再来年の参議院選挙において、構成メンバーが残らず当選するよう、私もこれまで以上に力を尽くしたい」
 私が申し上げたことはこれに尽きるのであり、この方針に沿って議論を進めて頂きたいと願います。水月会は矜持を持った一人一人によって構成された集団だと信じています。
 選挙は互いに助け合いながら必ず勝ち抜く。日本国が独立した(independent)、持続可能性を持つ(sustainable)国家として今後とも生き延びていくために、政治家は己や直近の利害を超え、主権者たる国民に誠心誠意訴え、理解を求める。そのような思いを、今後とも共有したいと強く願っております。

 合衆国の大統領選挙は来週には投票が行われます。結果は予断を許しませんし、仮に現職のトランプ氏が敗北しても、一方的に勝利宣言や選挙無効宣言を行ってそのまま地位に留まるなどという、考えられないようなシナリオまで取り沙汰されています。
 そんな報道に接するにつけ、アメリカは一体どうなってしまったのかと思いますが、かつて1950年代、ジョセフ・マッカーシー上院議員(共和党)を中心とする「赤狩り(共産主義者排斥運動・マッカーシー旋風)の嵐」が吹き荒れ、国内は大きな混乱状態に陥りました。マッカーシー議員の品位に欠けた侮蔑的な言動は、やがて国民の支持を失い、彼は失意のうちに亡くなるのですが、一時期は国民の過半が彼を支持し、意外なことに、民主党でリベラル派と目されていたジョン・F・ケネディ上院議員(のちの大統領)もマッカーシーの擁護者だったそうです。
 そう考えると、アメリカは混乱と狂騒が一時的に起こる国なのかもしれませんが、理想と思いやりのある、失われたバランスを健全な民主主義によって取り戻す力を持った国家となることを願わずにはいられません。

 さる24日土曜日に開かれた「富士山会合」(日米の政府関係者や有識者が国際問題を議論する会合。日本経済研究センター・日本国際問題研究所共催)の昼食会において、短いスピーチを行いました。中国を強く意識した発言が多い中にあって、アジアをより深く理解することの重要性と日米同盟の発展的な見直しを主張したのはやや異色だったのかもしれません。
 この必要もあって「中国海軍VS海上自衛隊」(トシ・ヨシハラ著・武居智久元海上幕僚長監訳・ビジネス社・2020・原題はDragon against the Sun)と「中国、日本侵攻のリアル」(岩田清文元陸上幕僚長著・飛鳥新社・2020)を改めて読み直してみたのですが、内容はとても示唆的です。ヨシハラ氏の著書は中国の文献の紹介が多く、やや一方的な見方もありますが、相当精緻・精密に日本ならびに日米同盟の能力を分析しています。中国の海軍力など所詮日米同盟の敵ではない、との思い込みは根本から改めなくてはならず、最新の知識が不足していたことを反省させられます。岩田氏の著書も、中国による台湾と先島諸島への同時ハイブリッド侵攻をシミュレーションしたもので、自衛隊の組織の根本的変革を訴えた力作です。
 現職自衛官が国会において答弁しないという慣例は、むしろ立法府による文民統制を大きく損なうものだとかねてから私は思っていますが、お二人のような直近までトップを務められた方を国会に参考人としてお呼びして質疑することは是非とも必要なことです。
 武居氏、岩田氏とも私と同じ昭和32年生まれですが、どちらも大変優れた方で、尊敬しています。是非ご一読ください。

 週末は党や地域の諸行事・諸会議出席のため鳥取二区も含めた地元へ帰ります。
 早いものでもう11月です。皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

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石破茂
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