第1172号 トランプ関税への対抗

3日、トランプ大統領が各国に対する関税措置を発表し、日本にも24%の関税が課されることとなりました。

 

◆世界同時不況か

この「トランプ関税」により、輸出会社、とりわけ自動車会社は大きな打撃を受けるでしょう。

そして、そのしわ寄せは関連下請け会社に集中するおそれがあり、せっかく上がり始めた賃金にも影響がでかねません。措置が発表された3日には株価も大暴落しました。

石破総理は「極めて残念で不本意」と述べていますが、要は日本を関税措置から除外する交渉は失敗したということです。 今のところ明確な対抗措置も示せず、なされるがままという状況です。

また、アメリカ国内でも物価が高騰することにつながり、結果的にアメリカの消費者が関税分を負担することになります。 世界経済の成長を牽引してきたアメリカの景気が悪化すれば、世界が混乱に陥り、好調だった株式市場なども失速するでしょう。

場合によっては、世界同時不況も覚悟しなければなりません。

 

◆考えうる対抗措置

国会議員の中には、アメリカに報復措置を取るべきだと勇ましく主張する議員も一定数います。アメリカの一方的な関税措置に対し、日本の対抗手段としては報復関税とセーフガード対抗措置という、2つの手段が考えられます。

どちらも基本的にはアメリカに対する関税を上げることによる対抗ですが、報復関税はWTO(世界貿易機関)の承認が必要となるところ、現在、WTOの紛争解決を司る上級委員会が委員不在で機能不全に陥っており、承認を得るハードルが高くなっています。一方、セーフガード対抗措置は、発動の法的ハードルは低いものの、実際に発動してしまえば、輸入食料品や飼料のさらなる高騰を招く恐れがあり、実体経済を考えると発動は困難です。日本はアメリカから食料や飼料、天然ガス等のエネルギーを主に輸入しているため、関税による対抗措置は取りにくいのです。

 

◆服従せず、かつ対立せず

この「トランプ関税」は、アメリカ自身が耐えられず、すぐに撤回するのではないかという予測もあります。しかし、アメリカは国内に膨大な資源と、食料を確保できる国土、世界一の市場を持っています。例え孤立化した経済の道を進み、関税措置によって経済に甚大な悪影響があったとしても、なお一国だけでやっていける国力を有しているのです。

しかし、日本は違います。国土条件から、食料・エネルギーとも、海外に依存せざるを得ず、自由貿易に国の活路を見出し、発展を目指すしかないのです。よって、関税による対抗措置をエスカレートさせるのは悪手です。

また、アメリカと勇ましく強気な交渉をしようにも、戦後一貫して防衛・経済共にアメリカに依存してきた歴史的経緯や、国力の強大さの違いから、対等な交渉は不可能で、全面対決に陥れば日本が圧倒的に不利な立場になります。諸外国の対応も、アメリカに近い経済力を有する中国は全面的に対抗する構えですが、EUや北中米各国は、全面的な対立を避けようとする苦慮を感じます。

日本としては、表立っては国会決議などで毅然とした姿勢を示す一方で、高関税の掛け合いはアメリカにとって損であることを主張しつつ、懐柔しながら譲歩を引き出していくしかないと思います。服従せず、かつ対立せずという難しい舵取りが求められます。

 

 

 

The post 第1172号 トランプ関税への対抗 first appeared on 馬淵澄夫(まぶちすみお)奈良県第1区選出 衆議院議員.

PR
馬淵澄夫
PR
mabuchisumioをフォローする
政治家ブログまとめ