金融審議会市場ワーキング・グループがまとめた「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)が老後のためには2,000万円の貯蓄を必要とすると報告しているとして、年金破綻だ、国家的詐欺だ、と大騒ぎになっている。
そもそも、少子高齢化により所得代替率は今後も下がる見通しで、平成26年度が62.7%、平成31年度見通しが約60%、将来的にも50%は維持する見込みというのが以前からの政府の見解だ。
このような状況も含めて、負担と給付の関係から、年金制度をどのように考えるかという視点の議論になってないのは大変残念なことでもある。
一方で、麻生財務・金融担当大臣の、資産形成の重要性を強調した発言から、一転、受け取り拒否という、手のひらを返したようなこの報告書への対応には、開いた口がふさがらない。
そもそも、審議会の報告書とはどういうものか。
金融庁企画市場局の回答はこうだ。
「今回の安定的な資産形成関連報告書提出の経緯は、麻生大臣からの諮問により、金融審が下部組織のワーキンググループに安定的な資産形成の議論を行わせ、ワーキンググループとしての報告書がまとまったものである。
通常は、ワーキンググループでまとまった報告書は、金融審の総会に上げられ、了承を頂いた上で政策決定の一参考資料として位置付けられる。
この一連の手続きは慣習的に行っているものであり、何らかの実定法や規則などに基づくものではない。
今回、麻生大臣が受け取らないというのは、ワーキンググループが出した報告書を、金融審の総会に上げること自体を拒否するということになる。諮問自体は大臣の判断で行われているので、ワーキンググループの出した報告書を受け取らないというのも、裁量と言っていいかは分からないが、大臣の判断次第だと思われ、違法というわけではない。
ワーキンググループの出した報告書は、下部組織のワーキンググループが出したという事実は残るが、金融審の了承を得ない以上は、政策の参考とすることは無い。」
とのことである。
要は、諮問自体は大臣の判断で行われている以上、諮問の結果について採用するかどうかについても大臣の判断次第で、違法とは言えないということ。
・・・だから、受け取り拒否。
しかし、これは、あり得ない話である。
大臣の諮問機関である審議会の下部組織ワーキンググループの検討メンバーも検討内容も、関係部局で詳細に詰める。もちろん、大臣承認の下でだ。
更に、報告書をまとめるための検討会においては、委員の発言、意見含めて、サブもロジも全て、事務方が周到に前さばきを行う。大臣の意思に反する報告書などが出来ようはずがない。それを、受け取り拒否とは、責任転嫁も甚だしい。
実社会では、あり得ない話だ、と経営者の皆さんからもたいそう厳しい声をお寄せいただいた。綻びは、続く。