第960号 「攻め」の感染防止策

 コロナ感染拡大が止まらない中、政府はGo Toキャンペーンの一部見直しのような受け身の対策に終始し、根本的な感染防止策に踏み込めないでいます。

◆Go To 失敗の理由
 鳴り物入りで始まったGo To Travel/Eat キャンペーンですが、経済活性化と根本的な感染防止策を並行させなかったため、結局感染が拡大し、見直しを余儀なくされ、経済にも悪影響を与える結果となりつつあります。

 例えば、夏の「第2波」の際には、東京新宿の歌舞伎町でのクラスター発生が東京での感染拡大のきっかけとなり、地方にも拡散していったのではないかとされています。「第3波」では、北海道札幌のすすきのクラスターで同じ事態が発生し、北海道で感染が爆発的に拡大しています。第2波の教訓を糧に、秋冬に備えてクラスターが発生した地区の集団検査や、店舗営業制限と補償などを実施するための法整備に着手しておけば、第3波は防げた可能性があったのです。

◆方針転換拒む政府
 感染急拡大を受けての25日の衆院予算委員会では、野党がPCR検査拡充に対する政府の姿勢を質しました。政府は、感染の蓋然性の高い方の検査は進めるが、一般国民に対しての検査拡充は、必ずしも感染を防ぐわけではないとする論文を根拠に挙げ、否定的な見解を改めて示しました。

 しかし、政府が主張の根拠としている論文は、コロナ感染拡大初期に行われたシミュレーションを基にした古いものであり、内容的に不正確なものであるとの医療関係者からの御指摘も頂いております。20万本とも言われるコロナ論文が出されている中、AIなどを活用した最新のデータベースを整理せずに、1つの論文に依って一般人への検査拡充が不要とするのは、あまりにも乱暴な議論です。

◆検査拡充こそ攻めの対策
 検査を拡充させずに、Go To 一時停止や店舗の時間短縮営業要請を繰り返すだけでは、いったん引いた波がさらに大きくなって押し寄せるだけで、根本的な解決にならないことはこれまでの経験から明らかです。国民の、自らが感染しているのではないか、また、感染者が近くにいるのではないかという疑心暗鬼を払しょくし、無症状感染者を早い段階で発見して、経済活動と感染防止を両立させるためには、公費支援による一般人の検査体制の整備充実が不可欠です。

 また、第3波では医療介護施設でのクラスターが広がってきています。政府は定期的に医療関係者が検査を受けられるよう通達を出しているとのことですが、医療現場からは、実態として定期的に検査を受けている状況ではないという声も頂いています。医療介護関係者への検査を特に速やかに進めなければなりません。

 検査拡充に対しては、大量の検査を行っているアメリカでは感染拡大が続いているではないかという反論もあります。日本が欧米に比べて感染者数が比較的少数にとどまっているのは、文化的な要因や遺伝子レベルの違いなどが指摘されていますが、確かな科学的証拠は今のところありません。今の段階では、欧米との比較で現状維持が正しいとするのではなく、国内で感染者を防止するための「攻め」の政策を断行すべきです。それが一般人への検査の拡充であることを、粘り強く主張して参ります。

 

■スタッフ日記
いつもと違う年末年始

 今年一年も、あと1ヶ月。コロナ禍で迎える年末年始に、いつにもなく落ち着かない心持ちで過ごしています。

 奈良市では、中止となった奈良マラソン、縮小が決定した1月の山焼きや、人数制限を決めた3月の東大寺お水取りなど、毎年恒例の楽しみが一つ、また一つと減っていくごとに、コロナに立ち向かいながら、懸命にバトンを繋ごうと多くの方の尽力がその舞台裏にあることに思いが溢れます。

 GO toイートによって、一時は業界にとって光が差し込んだかのように思えた街の飲食店も、11月に入ってからの第3波によって客足も止まり、稼ぎ時の忘年会シーズンを前に大きな不安を抱えています。

 今月の16日までに実施された東京商工リサーチによる調査によると、回答があった1万社のうち約9割にあたる企業が、今年は忘年会や新年会を開かないとしていることがわかりました。企業の自粛ムードと比例して、友人との会合も軒並みキャンセルとなるケースも増えており、さらなる深刻な状況が予想されます。

 特に、回答があったデータを地域別に見ると、開催を見送る企業の割合が最も高い都道府県は奈良県の96%で、次に93%の北海道、東京・大阪は共に90%と続いています。リスクを避けて、冷静に物事を判断する県民性を表すようなデータだと感じました。

 政府は、感染防止の徹底を呼びかけた上で、Go toキャンペーンを実施していますが、街の声はそれに相反するような結果となっていることに、どのような受け止めでいるのでしょうか。いまからでも遅くないコロナ対策のため、年末年始に向けた街の声を届けなくていけないと強く感じています。(特命係長)

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