妊娠中絶を拒否するアメリカ    

 アラバマ州議会が可決した法案にケイ・アイヴィー知事が署名し、妊娠中絶を全面的に禁止する全米で最も厳しい法律が成立した。強姦や近親相姦による妊娠も対象にする。中絶を認めてきた連邦最高裁の判決(1973年「ローvsウェイド」)を覆すことが目的で、50州のうち16州が同じような動きをしている。 この背景には、キリスト教がある。アメリカ建国の基礎は 「銃とキリスト教」である。銃は自らの身体を守るため、キリスト教は心を守るためである。この二つがなければ、開拓の苦労は乗り越えられない。 アメリカは、特殊な国であり、例外的な国である。伝統社会の日本人にとって、人工的に創られた国であるアメリカは自分の発想では捉えきれないところがある。キリスト教の力はヨーロッパでは弱まっており、私が生活体験のあるフランスのカトリックでも、ドイツのプロテスタントでも同じである。しかし、アメリカでは今なおキリスト教が人々の考え方や生活を律している。そのことを中西部の大学で痛感させられた私は、「キリスト教のアメリカ」の特異性についてかんがえてきた。 「アメリカは興奮して狂ってしまった(America went haywire)」からトランプ大統領を誕生させたのか。アンダーセンは、このポピュリズムは「この国の当然の宿命(nation’s natural destiny)」であるという(Kurt Anders続きをみる

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