米中貿易摩擦の背後にあるもの:異質な指導者と異質な体制  

 米中貿易摩擦は深刻な状態で、解決の展望は開かれておらず、世界経済の行方に暗い影を投げかけている。 トランプ大統領は、8月1日には、制裁の第4弾として、9月1日に3000億ドル相当の中国からの輸入品に10%の追加関税を課す措置を発動する方針を表明した。また、アメリカ財務省は、8月5日、中国を「為替操作国」に指定した。中国もまた、報復関税などの対米報復を実行している。 知的財産権などをめぐって、アメリカは、自国の先端技術が盗まれているとして、中国に対する不満を募らせている。本来は、WTO(世界貿易機関)が、公正な貿易ルールを守る立場から、中国に対して適切な対応をすべきだというのが、先進諸国の立場である。しかしながら、アメリカもまた制裁関税など様々な保護貿易的措置を発動しており、これもWTO違反である。 かつての大国アメリカは、貿易赤字の解消を目指しても、WTO(1995年以前はGATT)の通商ルールに則って、世界の関税を引き下げる方向で努力してきた。しかし、トランプ政権は貿易赤字の解消のためには制裁関税など、なりふり構わない手段を使い、アメリカ第一主義を振りかざして自由貿易の守護者としての矜持を捨て去ってしまった。 第二次世界大戦後のパックス・アメリカーナの下で、これほど露骨に自国第一主義の旗幟を鮮明にし、世界に対する責任を放棄した政権はない。パリ協定、TPP続きをみる

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