INF全廃条約失効・・・米中露、三つ巴の軍拡競争へ

 8月2日、INF(中距離核ミサイル)全廃条約が失効した。1987年に米ソ間で締結され、冷戦終焉への第一歩となった条約である。 昨年10月20日、トランプ大統領は、INF(Intermediate-Nuclear Forces、中距離核戦力)廃棄条約を破棄することを表明した。INFとは、通常弾頭や核弾頭を搭載する地上発射型ミサイルで、射程は500~5500㎞である。 1977年12月に、ソ連はINFのSS20をヨーロッパに配備し始め、1979年末には140基、1981年末には270基の配備を終了する計画を始めた。 この配備で欧州の緊張は一気に高まり、西ドイツなど西ヨーロッパ諸国は危機的状況に陥った。1979年12月12日に、NATOは、①ソ連との軍備管理交渉、②パーシングⅡと巡航ミサイルの配備という、「二重決定(Dual-Track Decision)」を行い、事態の打開を図ろうとする。 しかし、ソ連は軍縮交渉に応じないどころか、NATO決定の直後の12月27日、アフガニスタンに侵攻した。対ソ宥和のデタント(緊張緩和)路線を推進してきたカーターは、1980年の大統領選挙でレーガンに敗れた。大統領となったレーガンは、「力による平和」を強調し、「強いアメリカの復活」を目指す軍拡路線を採用した。 その結果、ソ連は軍備管理交渉に応じ、1987年12月に、レーガン大統領とゴルバチョフ・ソ連共産党書記長との間で、INF廃棄条約が締結された。3年以内にINFを全廃するという画期的な条約であり、1991年までに米ソ両国で2692基を廃棄することが決められた。 2年後にはベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦は終結するが、それを後押しする続きをみる

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